暮らし
水害から暮らしを守る水防活動。日頃からの備えで被害を防ぐ(その2)
POINT
台風や集中豪雨などにより、毎年のように水害に見舞われる我が国では、国や地方自治体などが行う治水事業とともに、市町村・住民による水防活動が「車の両輪」となり水害からの被害拡大を防いでいます。ここでは水防の中心を担う水防団の活動や、家庭で取り組める水害への備えなどを紹介します。
コラム1:総合水防演習
国土交通省では、梅雨や台風の時期を迎えるに当たり、国民一人ひとりが水防の意義や重要性について理解を深められるよう、毎年5月(北海道は6月)を「水防月間」と定めています。水防月間の取組の一つとして、国、都道府県、水防管理団体(市町村等)が連携して全国各地で「総合水防演習」が実施されています。
令和7年(2025年)5月24日に大阪市の淀川河川敷で実施された「淀川水防・大阪府地域防災総合演習」(主催:国土交通省、大阪府、大阪市)では、水防団によるアシストスーツを活用した水防工法や、国土交通省のTEC-FORCE隊員によるTECアプリなどを活用した被災地調査など、新技術やデジタル技術を活用した訓練が行われました。
2、家庭で水害に備える
「マイ・タイムライン」を作成する
マイ・タイムラインとは、洪水のような進行型災害に対し、一人ひとりの家族構成や地域環境に合わせて、「いつ」・「何をするのか」をあらかじめ時系列で整理した自分自身の行動計画です。
マイ・タイムラインは、以下の手順で作成します。
ステップ1 「知る」
洪水ハザードマップなどを確認して、お住まいの地域の水害リスクをチェックしましょう。洪水ハザードマップとは、想定される最大規模の降雨による浸水範囲や深さ、避難所などを地図上に記載したものです。国土交通省「ハザードマップポータルサイト」から確認することができます。
ステップ2 「気づく」
洪水時に得られる様々な防災情報の種類と内容を理解し、それらの情報の取得方法を知りましょう。突発的に発生する地震とは異なり、水害は刻一刻と状況が変化していく進行型災害です。河川の水位や雨量のデータ、防災気象情報、避難情報など様々な情報をもとに、時間軸で防災行動を考えることが大切です。
ステップ3 「考える」
洪水時の具体的な避難行動をシミュレーションし、マイ・タイムラインに落とし込みましょう。安全に避難するためにはどのような順序で行動するべきか、防災情報が発表されるタイミングに合わせて考えていきましょう。こどもや高齢者のいるご家庭では早めの避難を心がけるなど、それぞれの環境に応じてプランニングすることが大切です。
作成したマイ・タイムラインは家族と一緒にアップデートを繰り返すことで、もしもの際に正しい判断のもと的確な行動をとることができるようになります。国土交通省「マイ・タイムライン」では、マイ・タイムラインの作成を支援するツールを提供しています
コラム2:必要な情報に簡単にアクセスできる防災支援システムを開発
防災に関する情報は、様々な機関から多様な情報が発信されていますが、その一方で、自分にとって有用な情報を見つけ出すのは難しくなっています。そこで、国土交通省では、自らがいる場所の災害の危険性を簡単に把握し、日頃の準備や緊急時の適切な避難行動につなげることができるシステムを開発しました。令和7年(2025年)6月から、能登半島地震や奥能登豪雨で被災した石川県珠洲市で運用を開始し、今後、このシステムをモデルケースとして全国に普及させていくための方策を検討しています。
主な機能は次のとおりです。
- 携帯電話の位置情報を活用し、現在地の水害リスク(津波、洪水、土砂災害)を表示
- 洪水キキクル、土砂キキクルの情報をリアルタイムで提供
- 河川の水位、河川カメラの映像をリアルタイムで提供
- 避難行動などをクイズ形式で学ぶことができるコンテンツの提供
3、激甚化・頻発化する水害への対応
ハザードマップの作成対象を拡大
令和元年(2019年)に発生した台風19号(令和元年東日本台風)では、堤防が決壊した71河川の約6割に当たる43河川が洪水浸水想定区域の指定義務がない中小河川でした。これらの流域では、ハザードマップに洪水浸水想定区域が示されておらず、水害リスク情報の空白域解消が課題とされました。
これを踏まえ、令和3年(2021年)7月の水防法改正により、洪水浸水想定区域の指定及びハザードマップの作成・公表の対象が、全ての一級河川・二級河川に拡大されました。これにより、令和2年度(2020年度)時点で約2,000河川だった洪水浸水想定区域の指定対象は、約17,000河川まで拡大しました。追加された約15,000河川については、令和7年度(2025年度)末までに、洪水浸水想定区域図の公表が完了する予定です。これを受け、市町村によりハザードマップが整備されます。水害リスク情報の空白域を解消するため、国・地方自治体において取組が進められています。
まとめ
近年、想定を上回る豪雨などにより、前例のないレベルの水害に見舞われるケースが全国各地で相次いでいます。国や地方自治体によって河川改修などの治水事業が行われていますが、これには莫大な費用と長い年月が必要になります。異常気象が日常となりつつある今、水防団など共助の活動に加え、いざというときは、自らの命と家族の命を自ら守れるよう、自助として日頃からの備えと早めの避難行動が重要となります。
編集:チームコンシェルジュ
(取材協力:国土交通省 文責:内閣府政府広報室)