COOP SAPPORO コンシェルジュ

暮らしお役立ち情報 No.5

[サービスコード/P00123-00007]
2-2.薬剤耐性はどのような時に起こるのか
暮らしお役立ち情報 No.5

薬剤耐性菌が発生する原因とそのメカニズムを知らなければ、対策を打つことはできません。また、抗菌薬の不適切な使い方や環境によって、薬剤耐性菌はまたたく間に広がっていきます。薬剤耐性に関する正しい知識を得ることが、AMR対策の第一歩です。(公開日:2018年9月20日)

不適切な処方、不適切な服用

私たちの日常ではどのような場面で薬剤耐性が起こるのでしょうか。

抗菌薬は細菌による感染症の治療に使う薬です。普通の風邪など、ウイルスによる感染症には、抗菌薬は効果がありません。

細菌感染症と判断して投与された抗菌薬は、病気の原因となっている細菌だけでなく、さまざまな細菌に効きます。例えば抗菌薬を使うと、ヒトの腸にいる非常に多くの種類と数の細菌のうち抗菌薬が効く菌だけが死んでしまい、効かない菌(薬剤耐性菌)が生き残ります。生き残った薬剤耐性菌が増えてなんらかの感染症をおこせば、抗菌薬が効かない菌ですから、治療に困ることになるかもしれません。 どんなに注意しても抗菌薬を使うと耐性菌が生じる可能性がありますので、抗菌薬を使う機会を本当に必要なときだけに絞り込み、必要のないときは使わないことが薬剤耐性菌対策にはとても大切です。

その薬、本当に必要?~風邪に抗菌薬は効きません~

風邪を引いたときに、病院に行ってお医者さんから抗菌薬をもらった経験はないでしょうか?また、抗菌薬の処方をお医者さんにお願いしたことがある人もいるかもしれません。しかし、風邪の原因のほとんどはウイルスです。抗菌薬はウイルスではなく細菌に効く薬でした。ウイルスをやっつける力のない抗菌薬を服用することは効果がありません。それだけでなく、耐性菌の出現や副作用の観点からも、必要がないのに抗菌薬を服用することは推奨されません。

風邪に抗菌薬を処方してもらっても効果はありません。
抗菌薬の処方を希望するのはやめましょう。
またお医者さんの説明をききましょう。

薬は正しく飲みましょう

「症状軽くなったし、薬の量減らしちゃっていいよね?」

自己判断で薬の量を減らしては駄目です!

勝手に薬の量を減らしてしまうと、血液中の抗菌薬の濃度が低すぎる状態になってしまいます。薬の濃度が低いので細菌が完全に死滅せず、病原菌が抗菌薬に徐々に慣れてしまいます。
生かさず殺さずの状態を続けることによって、細菌が耐性を獲得しやすい環境を整えてしまいます。
また、薬の特徴によって1日に飲む回数は異なることがあります。用法用量を確認して正しく内服しましょう。なお、妊娠している方、授乳中の方は、医師や薬剤師にその旨を伝えましょう。抗菌薬の種類や妊娠の時期により、赤ちゃんに影響するものと影響しないものがあります。自分で判断せずに必ず相談してください。

「なぜ症状がよくなったのに、薬を飲まなくちゃいけないの?」

症状が良くなると、抗菌薬の服用をやめてしまう方がいます。
しかし、症状が良くなったとしても体内に細菌が残っていることがあり、治療が終わらないうちに抗菌薬の投与をやめてしまうと、きちんと治らずに感染症をぶり返してしまう恐れが高まります。したがって、完全に体内から原因となった細菌がいなくなるまで、きちんと服用する必要があります。

症状の有無に関わらず、お医者さんから指示された抗菌薬はきちんと飲み切りましょう。

抗菌薬を残しておいていつか使おうと考えるのは一見合理的に感じるかもしれません。しかし、その抗菌薬が次も効くとは限りません。思わぬ副作用が出る危険がありますし、保管状況による変化も心配です。抗菌薬を取っておかないようにしましょう。

耐性菌を出現させないために、「耐性菌が発生しやすい環境」をつくらないようにしましょう。

院内感染対策の不備

薬剤耐性菌が広がる原因の一つとして院内感染対策がうまくいっていない場合があります。薬剤耐性菌をもった人がいても、接触がなければ他の人に広がっていく事はありません。日常生活では他の人と物品を共有する事や、直接他人に接触する機会はそう多くありません。しかし、病院内では医療スタッフが介助をしたり診察するなど、直接接触する機会が多くあります。そのため薬剤耐性菌が手などに付着する機会が多いのです。

病院では、手指衛生の徹底、消毒、使い捨て物品を使用するなど、耐性菌が確認されているかどうかに関係なくすべての患者さんに対して感染対策を行っています。薬剤耐性菌は医療従事者を介して広がることがあり、感染対策の徹底はそれを防ぐことが大きな目的の一つとなっています。

薬剤耐性菌がすでに確認されている場合は、患者さんが専用の個室で過ごし、部屋に入る医療従事者や家族がガウンや手袋などを装着することも行われます。より厳重に対応することで薬剤耐性菌の拡大を防ぐために行うものです。こうした対応は各病院の方針に従って実施されます。面会者を含めた患者側の対応を求められることもあります。例えば、面会者に対しても手洗いや感染予防策を行ってもらうなどです。 最近では、医療従事者から患者サイドへのお願い、注意喚起だけではなく、患者側が医療従事者の不備に気づいた際に指摘をしてもらう試みも始まっています。医療従事者、患者双方が協力して薬剤耐性菌から身を守り、広げない努力が求められています。

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編集・脚本 チームコンシェルジュ

<掲載内容の情報源・根拠>

・AMR臨床リファレンスセンター
 かしこく治して、明日につなぐ ~抗菌薬を上手に使ってAMR対策~