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暮らしお役立ち情報 No.17

[サービスコード/P00140-00009]
8.緩和ケアについて理解する
暮らしお役立ち情報 No.17

がん医療における緩和ケアは、がんになってからもあなたらしく過ごせるように、心と体、社会生活を含めて援助していきます。(公開日:2018年12月7日)

「つらい」という言葉を聞いたときから緩和ケアは始まります

緩和ケアは、がんが進行した時期だけでなく、がんが見つかったときから治療中も必要に応じて行われるべきものです。がんと診断されたときには、ひどく落ち込んだり、不安で眠れないこともあるかもしれません。治療の間には食欲がなくなったり、痛みが強いことがあるかもしれません。「つらさを和らげる」という緩和ケアの考え方を、診断されて間もない時期から取り入れることで、こうしたつらい症状を緩和しながら日々の生活を送ることができます。
 
また、がんの治療が難しいということがあっても、それはその患者さんに何もできないということではありません。痛みや吐き気、食欲不振、だるさ、気分の落ち込み、孤独感を軽くすること、自分らしさを保つことや、生活スタイルの確保など、緩和ケアではそれぞれの患者さんの生活が保たれるように、医学的な側面に限らず、幅広い対応をしていきます。

自分らしく過ごせるように支援するのが緩和ケアの役割です

緩和ケアの役割は、時期にかかわらずがんに伴う体と心の痛みやつらさを和らげることです。また、緩和ケアは、患者さん本人や家族が「自分らしく」過ごせるように支えることを目指します。体のつらさだけでなく、心のつらさあるいは療養生活の問題に対しても、社会制度の活用も含めて幅広い支援を行うことも大切な役割です。

「痛みやつらいことは、仕方がないことだ」とあきらめることはありません。つらい気持ちを「人に伝えること」が、あなたの苦痛を和らげるための第一歩になります。がんと診断されたときや治療中、あるいは治療後でも、痛みや、気持ちのつらさや不安があるときには、いつでも、担当医や看護師、がん相談支援センターに緩和ケアについて相談してください。

緩和ケアにはこんな方法があります

がん診療連携拠点病院の指定を受けている医療機関は緩和ケアに対応できる機能があり、入院だけでなく外来診療でも対応できるように整備が進みつつあります。現在診療を受けている医療機関が、がん診療連携拠点病院の指定を受けていない場合でも、緩和ケアを提供していたり、ほかの医療機関と連携しながら対応できることがありますので、医師や看護師にお尋ねください。

■入院中に緩和ケアを受ける場合

入院中に緩和ケアを受けるには、緩和ケア病棟への入院と、緩和ケアチームによる診療という2つの方法があります。

・緩和ケア病棟

緩和ケア病棟は、専門的な知識と技術に基づいた緩和ケアを提供する場です。体のつらい症状や、心のつらさ、苦しみを和らげることを重要な治療として位置づけています。がんの進行に伴う体のつらい症状や精神的な苦痛があり、がんを治すことを目標にした治療(手術、薬物療法〔抗がん剤治療〕、放射線治療など)の適応がない、あるいはこれらのがん治療を希望しない方を主な対象としています(個々の患者さんの受け入れについては、各施設にお尋ねください)。

・緩和ケアチーム

入院療養中の患者さんのところに緩和ケアを担当するチームが診察したり、話を伺うために病室を訪問します。治療に当たる医師と協力して、痛みやつらさを和らげる支援を行います。緩和ケアチームは、身体症状や精神症状を担当する医師、緩和ケアチームでの活動を専門的に行う看護師、薬剤師、心理士、ソーシャルワーカーなどの専門家が、状況に応じて診療に当たります。

■外来、あるいは在宅で緩和ケアを受ける場合

・緩和ケア外来

通院中の患者さんに外来で緩和ケアを提供します。在宅で緩和ケアを継続的に行う患者さんが通院することもできます。治療を担当している医師の診療と協力して、がんに対する治療を継続しながら、つらい症状の内容に応じて痛みを和らげるための支援を行います。患者さんを日々支えている家族のケアも行います。訪問診療を行っている診療所や訪問看護ステーションと連携して、緩和ケアが在宅でもできるように必要な支援を行ったり、本人や家族の希望に応じて緩和ケア病棟などへの紹介を行う役割を担っています。

訪問診療(ほうもんしんりょう)
医師が、在宅で療養している患者さんの自宅を計画的・定期的に訪問し、診察、検査、治療などを行うことです。さまざまな医学的な管理や、がんの痛みなどに対する在宅緩和ケア、終末期のケアも行います。医療保険または介護保険が適用されます。

・在宅緩和ケア

自宅で、あるいは慣れ親しんだ地域の介護施設で緩和ケアを受ける患者さんを支える在宅ホスピス在宅緩和ケアを行う在宅医や訪問看護師が全国で活躍しています。介護保険も利用して、自宅で療養を続け、そのまま安心して看取りをすることも可能になってきています。一人暮らし、家族が高齢などの理由で医療の継続(点滴や痛みの緩和など)や介護などの不安や心配があるかもしれません。しかし、訪問診療や訪問看護、地域の調剤薬局などの医療と療養介護の両側面から支援があれば、最期まで安心して自宅で過ごすことも可能です。

「家に帰りたい」「慣れ親しんだ家で、地元で過ごしたい」という思いがあれば、医療職、介護職がチームを組んでサポートします。まずは、がん相談支援センターや、最寄りの在宅緩和ケアセンターに相談してみてください。

ホスピス
がん患者さんを主な対象とし、体と心の苦痛緩和のための治療とケアを行う病棟です。「緩和ケア病棟」も同じような意味で用いられている言葉ですが、「ホスピス」のほうが終末期のケアをより強く意識した言葉として捉えられる場合があります。医療費は健康保険が適用され、厚生労働省から「緩和ケア病棟」として承認を受けた施設の場合、医療費は定額制となります。
在宅緩和ケア(ざいたくかんわけあ)
在宅で療養している患者さんに対する緩和ケアのことです。
がんに伴うさまざまな問題(痛み、不快な症状、家族との関係、精神的不安、経済的不安など)に対して、在宅でも患者さんが療養しやすい環境を整えるという観点で、医療的な面だけではなくさまざまな視野から総合的に支えていきます。
訪問看護(ほうもんかんご)
看護師や保健師が、在宅で療養している患者さんの自宅を訪問して医療面から療養生活の支援を行うサービスのことです。主治医の指示に基づいた生活支援、リハビリテーション、床擦れ予防処置、カテーテル管理、介護や看護に関する相談などがあります。医療保険または介護保険を利用してこのサービスを受けることができます。
調剤薬局(ちょうざいやっきょく)
医師の処方せんに基づいて薬剤師が薬を調剤する施設です。薬剤師は、在宅で療養している患者さんに薬の配達、服薬・管理指導、副作用の説明などを行うこともあります。

◇◆緩和ケアとの出会いのおかげで、がんと向き合える◆◇

私は「がんと言っても治る時代になりつつあるし、切れば治る」と黄疸(おうだん)で即入院したにも関わらず深く落ち込みませんでした。病棟には「緩和ケアチーム」の掲示がありましたが、身体のどこが痛いということもなかった私には関係ないと思っていました。その後、手術もむずかしく、再発転移の可能性が高いがんと医師から知らされました。厳しい数字と現実に衝撃でしたが、転院して治療を受けると決心したので、「このつらい思いは胸に納めていよう」と思いました。しかし、転院先への聞き取り時に看護師さんに思わず苦しい気持ちを漏らしました。私のつらい気持ちを知り、病院間の緩和ケアチーム同士の申し送りで緩和ケアをスムーズに受けられるよう手配してくださいました。おかげで転院直後より、緩和ケアを受けることができ、担当医に聞けない話も聞いてもらいました。今思えば「緩和ケアのおかげで逃げることもなく今もがんと向き合うことができているのだな」とようやく気がつきました。

◇◆早期からの緩和ケアを受けて、治療を継続できた◆◇

緩和ケアというと、病期が進んでから受けるものと思っていましたが、今は、治療が始まった時から行うということでした。

私も、手術後に抗がん剤の治療を受けることになり、ドラマなどで見る光景を思うと、とても怖いと思っていました。でも実際は、起こる可能性のある副作用に対して、あらかじめ予防薬を投与してくださるので、拍子抜けするくらい楽に過ごせました。

吐き気も痛みも、薬でうまくコントロールされ、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を落とすことなく、治療も最後まで受けることができました。また、仕事を続けながらの治療でしたので、4週間ごとに休日と有給休暇を使って4日ほどの休みをとれば、普通に勤務することが可能でした。以前、早期からの緩和ケアが受けられなかった頃には、治療がつらすぎて、途中で治療を断念される方も少なくなかったということですので、医療はあらゆる面で日々進化していると感じました。

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編集・脚本 チームコンシェルジュ

<掲載内容の情報源・根拠>
・国立がん研究センター がん対策情報サービス
 「がんになったら手にとるガイド」