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暮らしお役立ち情報 No.15

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がんを治せる時代が来る!?「光免疫療法」ってどんなもの?
暮らしお役立ち情報 No.15

光を当て、がん細胞だけ破壊する。痛みも副作用もほとんどない画期的な治療法が、実用化に向け着々と進んでいることをご存知でしょうか。がんはもう怖くない!と言える時代が来るかもしれません。

2人に1人ががんにかかる時代

日本では毎年、約37万人ががんによって亡くなっています。最近では、一生のうち2人に1人(男性の60%、女性の45%)が、がんにかかり、3人に1人ががんで亡くなるという、国民にとって大変重要な病気となっています。早期発見・早期治療によって、治せるがんが増えてきていると言われていますが、やはり「がん=死」と考えてしまう方が多いのではないでしょうか。実際、さまざまな治療法を試したものの、完治には至らず、最後は力尽きてしまう患者さんも少なくありません。しかし2011年、光を当ててがん細胞だけを消滅させる「光免疫療法」が発表され、実用化に向けて日本でも2018年3月から治験が開始されていることをご存知でしょうか。

「光免疫療法」とは

光を当てて、がん細胞だけを消滅させる、米国立衛生研究所主任研究員の小林久隆さんが開発した画期的な治療法が「光免疫療法」です。現在、標準治療となっている「手術」「薬物療法(抗がん剤など)」「放射線治療」では、がん細胞だけではなく正常な細胞にも影響するため、副作用が避けられません。「光免疫療法」は狙ったがん細胞に光を当ててがん細胞だけを消滅させ、周りの正常細胞には影響しないため、副作用はほとんどありません。
がん細胞には、正常細胞よりも特に多く存在する抗原があります。その抗原に結合する性質をもつ抗体に、光が当たった時だけ反応する物質を結び付け、点滴で投与することで患者のがん細胞にくっつけます。その後、近赤外光というテレビのリモコンにも使われている光を当てると、抗体に結び付けた物質が反応し、がん細胞が破壊されるのです。その際、周りにある正常細胞には抗体がくっついていないため、破壊は起こりません。がん細胞にのみ狙って攻撃できるのです。

がん細胞が破壊された後

光免疫療法でのがん細胞の破壊は、細胞膜が破れて外から水が入りこみ、膨張して破裂するというものです。この時にがん細胞は内容物を噴出するので、近くにいる免疫細胞が目覚め、残ったがん細胞を攻撃するという免疫の仕組みが動き始めます。マウスの実験では、すべてのがんを破壊するには足りない量の光しか当てていなくても、その後、がん全体が消えてしまうという結果が出ています。

制御性T細胞の存在

私たちの体では、日々数千億個の細胞が死に、新たに細胞を生み出しています。しかし、時には新たな細胞に不良品が出来てしまうことがあります。一日に出来てしまう不良品の細胞は5000~1万個と言われています。通常は、不良品なので生き延びることが難しく、そのまま死んでしまうか、もしくは免疫細胞が不良品を見つけて退治してくれます。しかし何らかの原因で免疫力が低下していると、生き残ってしまう不良品が出てきます。それががんの素となり、長い時間をかけて増殖してがんになっていきます。この時に、がん細胞は「制御性T細胞」と呼ばれる細胞を集めます。制御性T細胞は、免疫機能を制御していて、通常は自己免疫疾患やアレルギーが起こらないように免疫機能を抑えたりしています。しかしがん細胞に集まった制御性T細胞は、免疫機能を抑えることで、がん細胞の増殖をも守ってしまうことになるのです。

光で制御性T細胞も破壊できる

マウスの実験で、制御性T細胞に結合する抗体を投与し、がんのある場所に光を当てることで、がんが消えたという結果が出ました。がんに結合する抗体ではないので、がん細胞の破壊が行われていたわけではありません。免疫細胞の活動を抑えていた制御性T細胞が光によって破壊され、今まで眠っていた免疫細胞が正常に動き始めたのです。目覚めた免疫細胞は、近くのがん細胞をみつけ、攻撃を始めます。そして近くのがん細胞を消滅させた免疫細胞は、他の場所に転移した同じ種類のがんまでも攻撃し始めました。全身にがんが転移したマウスで実験すると、1か所に光を当てただけで全身のがんが消滅したという結果が出ています。
さらに、制御性T細胞を破壊しても免疫細胞の攻撃対象は近くにあるがんだけで、違った種類のがんには働かないこと、免疫機能が暴走してアレルギーや自己免疫疾患を起こすことがないということもわかっています。

がん細胞への直接攻撃と本来の免疫細胞の覚醒

光「免疫」療法の名の通り、がん細胞を光で破壊することに加え、人間が本来持っている免疫機能を活動させることで、がんを治癒へと導くのがこの治療法です。がん細胞の破壊と免疫細胞の活動、この二重のカバーの治療によって、全体の8~9割のがんの治療が可能になると考えられています。
また、うまくいけば、一度治療したがんに対して免疫ができる可能性があります。そうすると同じ種類のがんについては再発が起こりにくくなるのです。実験では、光免疫療法で治療したマウスに同じ種類のがんを移植しようとしても拒絶されます。このような再発を抑える効果についても現在研究が始められています。

実用化に向けて

アメリカで行われた最初の治験は、他の治療法では効果がなかった、頭頚部の進行再発がん患者7人を対象に行われました。結果は、7人中7人が光免疫療法によってがんが縮小し、そのうち4人のがんが消滅しました。日本では、2018年3月14日に国立がん研究センター東病院において、頭頚部扁平上皮がんの治験が始まりました。順調に進めば2~3年のうちには厚生労働省の承認を受け、さらに10年以内には8~9割の患者が使える抗体を揃えられるのではないかと考えられています。
また、頭頚部がん以外のがん種を対象とした治験も、2018年末までに2件開始されるということです。
今この瞬間にも、がんに苦しんでいるたくさんの方々へ、痛みも副作用もほとんどない画期的な「光免疫療法」が一日も早く実用化されることを願っています。


編集・脚本 チームコンシェルジュ

<参考文献>

永山悦子『がん光免疫療法の登場』2017年 青灯社

国立がん研究センター東病院「光免疫療法 治験についてのお知らせ」

楽天アスピリアン社 PRESS RELEASES


 

最新情報(2020.9.25)

光免疫療法に使われる薬剤とレーザ装置を厚生労働省が承認!

楽天メディカルジャパン、医薬品・医療機器によるがん局所治療 アキャルックス®点滴静注250㎎及び、BioBlade®レーザシステム 国内での製造販売承認取得のお知らせ

2020.09.25

楽天メディカルジャパン株式会社 (本社:東京世田谷区、代表取締役会長:三木谷 浩史) は、本日、がん細胞を壊死させる新しい局所治療に用いる医薬品「アキャルックス®点滴静注250㎎」(一般名:セツキシマブ サロタロカンナトリウム (遺伝子組換え) / 以下、アキャルックス®) について、「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」を効能・効果として、厚生労働省より製造販売承認を取得したことをお知らせします。本剤と組み合わせて用いる医療機器レーザ装置「BioBlade®レーザシステム」(以下、BioBlade®) についても、9月2日 (水) に製造販売承認を取得しています。アキャルックス®は、2019年4月に先駆け審査指定制度対象品目の指定を受け、本年3月に条件付き早期承認制度のもと、承認申請を行いました。日本は、製造販売承認を取得した初めての国となります。

出典:楽天メディカル社『Press Releases』より引用