COOP SAPPORO コンシェルジュ

チームコンシェルジュ No.16

[サービスコード/P00145-00001]
認知症にならないために、今できること。
チームコンシェルジュ No.16

誰もが将来なってしまうかもしれない認知症。自分や家族がいつまでも健康で過ごせるために、今から予防のために出来ることを始めましょう。

認知症とは

認知症とは、病気の名前ではありません。いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったために、記憶・判断力の障害などが起こり、生活するうえで支障が出ている状態がおよそ6ヶ月以上続いている状態を指します。症状が出てきても、生活に支障がなければ認知症とは診断されません。
日本は急激な高齢化社会を迎えています。今後、認知症高齢者が増加していくと考えられます。厚生労働省によると2025年には約700万人(65歳以上の5人に1人の割合)が認知症になると推計されています。

介護が必要になる原因1位が認知症

近年、介護難民や老老介護、介護業界の人材不足、被介護者への虐待など、介護に関する問題がさまざま取り上げられています。経済的な理由で満足な介護が受けられず、そのため家族への負担が重くなるなど、介護は自分だけの問題では済まない場合が多いです。厚生労働省によると、介護が必要になった主な原因の1位が認知症です。もし、認知症を予防することが出来るなら、介護の問題についても解決の一助となるのではないでしょうか。2位の脳血管疾患(脳卒中)についても認知症との関わりが深く、脳血管疾患が原因で発症する認知症もあります。後述しますが、脳血管疾患の予防は認知症の予防にもなるのです。

要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)

認知症の原因

認知症の原因疾患については、数十種類もあると言われていますが、主なものとしては「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」の3つがあげられ、全体の9割を占めています。

認知症の原因となる病気

東京都福祉保健局HP「とうきょう認知症ナビ」認知症の基礎知識をもとに作成

主な原因疾患としては、アルツハイマー病が一番多く、続いて脳梗塞や脳出血などの脳血管障害で、合わせて全体の約8割を占めています。これらは生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)や脳の老化が発症のリスクを高めるとされていて、普段の生活管理と脳を使うことによって脳を活性化させることが認知症の予防につながることがわかってきました。
その他にはパーキンソン病を引き起こす物質でもある「レビー小体」という異常なたんぱく質がたまり、脳が委縮していくレビー小体型認知症や、前頭葉、側頭葉のどちらか、あるいは両方に委縮が起こって発症する前頭側頭型認知症などがあります。
しかし、アルツハイマー型認知症の人がずっとアルツハイマー型認知症とは限らず、レビー小体型に変わることもありますし、前頭側頭型認知症を合併することもあります。また、なんらかの脳血管病変がアルツハイマー型認知症の発症を早めることもあります。認知症と一口に言っても、原因となる病気によってその症状や治療方法も異なります。

認知症の予防策

全体の8割を占めるアルツハイマー病と脳血管障害については、原因や予防策がわかってきています。しかし、レビー小体型など他の認知症を引き起こす疾患については、残念ながらまだ予防策が打ち出されていません。ただ、これらの疾患も脳の老化が最大の危険因子と言えます。アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症を予防する生活は、認知症の8割を回避するだけでなく、他の認知症の原因疾患の予防にも有効です。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、「アミロイドβたんぱく」「タウたんぱく」という異常なたんぱく質が脳に蓄積して、やがて脳の神経細胞にダメージを与えることで起こります。
アミロイドβたんぱくは、本来代謝されて消えていくものですが、何らかの要因で脳の神経細胞周辺に溜まっていき、黒いシミを作ります。これを「老人斑」と呼びます。タウたんぱくも同様に脳の神経細胞に蓄積し、神経細胞そのものを死滅させます。アルツハイマー型認知症の初期にはアミロイドβたんぱくが溜まり始め、その約10年後にタウたんぱくが溜まり始めます。こうして両者の蓄積が続き、発症していくのです。
アルツハイマー型認知症では、脳の中枢を担い、記憶をコントロールする「海馬」が最初に壊れ、次に思考や判断などをつかさどる「前頭葉」が壊れていきます。そのため、最初に記憶障害が起こり、やがて思考力や判断力の低下といったさまざまな症状が現れます。
アミロイドβたんぱくやタウたんぱくが脳に溜まっていく最大の要因は老化です。アミロイドβたんぱくは40歳くらいから溜まり始めると言われています。認知症なんてまだ先のことと思わずに、脳の老化を防ぐライフスタイルを早いうちから続けていくことがこうした物質の異常蓄積を防止するのに有効なのです。また、脳の海馬は、年齢にかかわらず、知的活動によってその神経細胞が増えていくことがわかっています。年をとっても脳を使い続けていけば、新しい細胞が生まれ大きくできる、ただ一つの脳の領域です。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳の血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管が破れて起きる脳出血、くも膜化出血などのいわゆる「脳卒中」が原因で、脳の細胞に十分な酸素が送られなくなり、脳内の神経細胞が死んでしまうことで発症します。
脳は体重の2%程度の重さしかないのに、体全体で使われる酸素の20%を使っています。また、脳が活動するには最低でも1日約120gのブドウ糖が必要です。酸素とブドウ糖は、血液によって血管を通り、絶えず脳に運ばれます。脳はそれらを使って活動し、1日で約500キロカロリー相当のエネルギーを消費すると言われています。そのため、脳血管を守り、脳血流を保つことが、脳の活動を守るためにとても重要なのです。
初めて脳卒中を起こすと、約10%の人が認知症を発症します。そして脳卒中を繰り返すと、約30%の人に認知症が起きます。かくれ脳梗塞と言われる「無症候性脳梗塞」は自覚症状が出ないため、知らない間に脳梗塞が繰り返され、そこへ新たに脳卒中を起こすと高い確率で認知症を発症します。
脳卒中の主な原因は動脈硬化です。動脈とは、血液を体に送る血管のことで、その血管の内側が汚れて血液の通り道が狭くなり、血管が硬くなっていくことを動脈硬化と言います。動脈硬化は生活習慣とかかわりが深く、喫煙、コレステロール、高血圧、糖尿病、肥満、運動不足などの危険因子が重なることによって発症しやすくなります。

脳を健康に

アルツハイマー型認知症も脳血管性認知症も、長い年月をかけて、アミロイドβたんぱくが溜まっていったり、血管が汚れて硬くなっていったりすることで発症します。なるべく早くから、これらの予防を心がけた生活を送ることが、認知症の予防につながっていくのです。
脳を健康に保つために何をしたら良いのか?ここでは次の4つを紹介します。


①食事
②運動
③脳を使う
④身なりに気を遣う


①食事

脳を健康に保つには、食生活を健全にすることが大切です。食事は脳に与える栄養を取り入れる大切な作業です。しかし、脳血管性認知症は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が危険因子であり、これらの病気は食生活と深いかかわりがあります。
また、マウスを使った実験では、高脂肪や高コレステロール食で、アルツハイマー型認知症を引き起こすアミロイドβたんぱくの沈着量が増加するという結果が出ています。
そこで、認知症を予防するためにも、生活習慣病にならない食生活を送ることが基本となってきます。
具体的には、どのような食事が良いのでしょうか。赤ワイン、青魚、ココナッツオイルやオリーブ油、豆やゴマ、海藻、きのこなどなど、どの食材のこういう栄養素がいいという情報があちこちで見られます。確かに、赤ワインに含まれるポリフェノールが細胞を傷つける活性酸素の作用を抑えてくれるのかもしれませんし、青魚に含まれるDHAやEPAがコレステロールを減少させ、アラキドン酸が脳の機能を高めてくれるかもしれません。しかし、赤ワインはお酒ですから、毎日たくさん飲んでいればアルコールが脳を委縮させたり、肝臓病などの別な病気の原因にもなりますし、脂の多い青魚を食べ続けることによって動脈硬化が進行したり糖尿病のリスクが高くなるということもあります。××という食材が〇〇という病気の予防に効果があるけれども、××が△△という病気を引き起こす可能性がある、ということは多々あるのです。リスクを回避するために、別なリスクを高めてしまうのでは意味がありません。 認知症を予防するために取り入れたい食材はいろいろありますが、過ぎたるは及ばざるがごとしということでしょう。朝昼晩3食規則正しく、さまざまな食材をバランスよく、腹八分目で食べすぎない、ということに尽きるのではないでしょうか。そしてこのことが、認知症だけではなく、がんや心筋梗塞や糖尿病といった生活習慣病を予防していくことにもつながっていくのです。

②運動

運動が脳を活性化させるということは、さまざまな研究で明らかにされています。そもそも体を動かすことができるのも、脳が「動け」と命令しているからです。運動することが脳を動かすことにつながるのです。また適度な運動は、生活習慣病を予防することにもなりますので、認知症のリスクを高める生活習慣病を予防することは、認知症を予防することとつながります。
「運動」というと、息を切らして汗を流す、そんな想像をする方がいるかもしれません。ジムの会員になって週に何回か通う、着替えて運動靴をはいてジョギングする、野球やサッカーの社会人チームに入る、プールに行って水着に着替えて泳ぐ、なんてことを考えると「運動なんて出来る気がしない」と思われる方は多いでしょう。
しかし、ここで言う運動は、とても簡単です。「歩くこと」です。
歩くこと。これはもっとも手軽で、もっとも効果的な認知症予防と言えます。歩くことは有酸素運動です。有酸素運動とは呼吸をしながらある程度の時間を継続して行う運動のことを言います。運動を継続して行うためには大量の酸素が必要になります。そのため、心臓や肺が体内にたくさん酸素を送り出すために一生懸命働き、その結果、脳への血流も増えることがわかっています。また、運動すると血管内では「血管内皮増殖因子」と呼ばれる物質が出て、傷ついた血管を修復したり、新しい血管を作るのを促してくれます。脳へ酸素や栄養を届ける心臓や肺や血管が、運動することでどんどん強化されていくのです。

それから、運動することによって増える「アセチルコリン」という物質があります。これが増えると、脳にある海馬の神経細胞の新生増加を促すこともわかってきています。海馬は記憶をコントロールする場所であり、そこで神経細胞が増えることによって記憶力が改善します。また、体を動かすことによって増加する「ネプリライシン」という酵素が、アミロイドβたんぱくを分解する働きがあることも判明しました。
では、どのように歩けば良いのでしょうか。頑張りすぎず、自分が心地よいと感じるスピードで、まずは20分程度の少し長めの散歩を心がけてください。頑張りすぎると交感神経が緊張して血圧が上がってしまいます。心拍数が上がると、年配の方は不整脈や狭心症を起こす心配もあります。鼻歌が歌える程度のスピードで、景色などを眺めながら、楽しんで歩いてみてください。楽しんで歩くと、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質がたくさん分泌されます。セロトニンは、「幸せホルモン」とも呼ばれ、興奮や緊張を抑えて気持ちを安定させてくれる作用があります。このセロトニンが不足すると、心が不安定になってキレやすくなり、うつ状態になります。うつ状態の脳は海馬の神経細胞の新生が減り、海馬が委縮してしまうので、記憶力の低下につながります。楽しんで歩き、セロトニンを増やして、脳も心も健康になりたいものです。
また、適度な運動は、睡眠の質を向上させます。睡眠と認知症の間には実は深い関係があります。起きている間は体を動かしたり、物を認知したり、行動を判断したり、脳はとても忙しいので、夜間寝ている間にメンテナンスを行います。目や耳などからの情報が少ない夜間に、その日の出来事を記憶したり、より良い判断が出来るように神経細胞のネットワークを作り変えたりといった、いわば脳の進化が行われているのです。また、マウスの実験では、起きている時間が長いとアミロイドβたんぱくの沈着が増加するという結果が出ています。昼間は適度に運動して、夜はぐっすり眠ることが、脳の成長を促し、認知症を予防することにつながるのです。

③脳を使う

脳は使えば使うほど進化していき、使わなくなるとみるみるうちに衰えていきます。脳細胞は減り続けていくもので決して増えることはないと言われていましたが、近年、年をとっても脳の神経細胞が増えることがわかってきました。また、少しでも脳に変化を与えるような行動を試みると、高齢者でも若年者でも脳の形態や機能に必ず変化が出ます。
では、どのように脳を使えばいいのでしょうか。何か特別に難しい勉強をしたりする必要はありません。パズルや手指を使う遊びによって、日常に使う脳の領域とは違うところが刺激されたり、趣味や旅行を楽しんで知的好奇心を満たすことで、脳の神経伝達物質がさかんに放出されたりするのです。「脳トレ」という言葉もすっかり一般的になりました。ゲーム形式で記憶の訓練や計算、漢字の書き取りなどを行うもので、これらももちろん脳の機能を高めるのに有効です。
何にでも興味を持って、新しいことに楽しんで取り組む。ということが脳にとても良いのです。脳は、楽しくて嬉しくて面白いと感じると活動が盛んになります。
その中でもおすすめなのが料理です。普段あまり料理をしない人はもちろん、普段から料理している人は新しいメニューや食材に挑戦することで脳を活性化させることができます。料理は、何を作るかメニューを考え、レシピを探し、材料をそろえます。足りないものは買い出しに外へ出掛けなければいけません。材料がそろったら、下ごしらえをし、どの順番で調理するか全体の流れを考えます。切ったり混ぜたり計ったり炒めたり、手や指や目などフル回転で使います。出来上がった料理を食べてみて、ちょっと硬いかな、味が薄いかなと味覚も使いますし、美味しく出来ていたら、嬉しい気持ちになり、達成感も味わえるでしょう。そして料理をしていくと、食材や栄養にも興味がわくようになり、①で述べたバランスのよい食事に近づいていけるかもしれません。ぜひ、脳のために、料理を始めてみてください。

④身なりに気を遣う

認知症の前兆として、服装など身の回りに無頓着になる、ということがあります。実は、身なりと脳の状態は意外と一致しているということが明らかになっています。身なりがきちんとしている人の脳は、たとえ70代でも50~60代に見える若々しい脳をしていたり、身なりに気を遣わずだらしなかったりする人は脳の萎縮の進行が見られたりします。お洒落な人の脳は実際に若いのです。脳が健全だから身なりに注意を払えるのか、またはその逆なのか、因果関係についてはわかっていませんが、関係があるのは確かなことです。
私は認知症ではないけれど、ただもうお洒落をするような年ではないし、着飾っても誰に見せるわけでもないんだから、と思っている方もいらっしゃるでしょう。しかし、こういう消極的な考え方をしていると脳がだんだん衰えてしまうのです。人はお洒落をすると気分が晴れやかになりますし、新しい服に袖を通すときはウキウキして新鮮な気持ちになります。また、身なりを整えると、外出したくなったり、人に会いたくなったりします。外の空気を吸って、寒さや温かさ、風や湿度を感じるだけでも脳に心地よい刺激を与えますし、特に人に会うということは脳が活性化する絶好の機会なのです。人の話を聞く、理解する、話す言葉を考える、相手の気持ちを思いやる、時間に気を遣うなど、脳はフル回転しています。誰かと会う約束をしなくても、散歩ですれ違ったご近所さんに挨拶をしたり、人に道を聞かれたり、スーパーで買い物をして店員さんと会話をしたりと、外に出てこそ出来るコミュニケーションがあるのです。
外出の予定がなくても、朝起きたらパジャマから着替えて、パリっとした気持ちで生活してみてはいかがでしょうか。生活にメリハリが出来、だんだん外に出たくなったり、人に会いたくなったりするかもしれません。

最後に

今は、認知症の予防について書かれている本もたくさんあり、インターネットでも検索するとたくさんの情報が出てきます。細かい内容はそれぞれ違いますが、大局的には、正しい食生活と適度な運動、そして人とのかかわりを楽しんで生き生きと毎日を過ごすこと、というのが認知症の予防にとって有益であると論じられています。
米国の修道女を対象にした研究で、死後に解剖して脳を調べると、脳にアルツハイマー病変が多量に出現していても認知症を発症しない例が数%あるということがわかりました。脳の病変と認知障害の程度は基本的には一致します。修道女のように、規則正しい毎日で、自分の役割を果たしながら生活することが、アルツハイマー病変に打ち勝って認知機能を維持できる要因になるのではないかと考えられます。
人の体は必ず老いていくものです。でも死ぬまで病気でいるか、死ぬまで人生を楽しめるかは、心がけ次第でいくらでも変えることができると思っています。今より早い時はありません。ぜひ、出来ることから始めてみてください。


編集・脚本 チームコンシェルジュ

<参考文献>

瀧靖之『脳はあきらめない!』2016年 幻冬舎
朝田隆『ボケない暮らし30カ条』2016年 法研
山口晴保『認知症予防』2014年 協同医書出版社
長尾和宏『認知症は歩くだけで良くなる』2016年 山と溪谷社
伊古田俊夫『40歳からの「認知症予防」入門』2016年 講談社
白澤卓二監修『脳にいいこと事典』2017年 西東社
野本裕子著 神津健一監修『認知症が治っている』2016年 素朴社
羽生春夫『認知症にならない人がやっているスッキリ脳のゴミ掃除』2017年 双葉社
NHKきょうの健康『認知症・要介護を予防・改善!「脳の病気」最新対策』2018年 主婦と生活社