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暮らしお役立ち情報 No.23

[サービスコード/P00156-00002]
「食べる力」=「生きる力」を育む 食育 実践の環(わ)を広げよう
暮らしお役立ち情報 No.23

「食育」とは、様々な経験を通じて、「食」に関する知識と、バランスの良い「食」を選択する力を身に付け、健全な食生活を実践できる力を育むことです。食べることは生涯にわたって続く基本的な営みですから、子供はもちろん、大人になってからも「食育」は重要です。健康的な食のあり方を考えるとともに、だれかと一緒に食事や料理をしたり、食べ物の収穫を体験したり、季節や地域の料理を味わったりするなど、食育を通じた「実践の環(わ)」を広げましょう。

インデックス

1.なぜ「食育」が大事なの?
2.健全な食生活を実践するには?
3.食べることの「楽しみ」って?
4.私たちの食べ物はどこから?

1.なぜ「食育」が大事なの?

食をめぐる課題の解決に、「食べる力」=「生きる力」を育むことが重要

食育は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎と位置づけられるとともに、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる力を育むことを目指しています。

こうした「食育」がいま重要とされる背景には、近年、食に関連した様々な課題が浮上していることがあります。

例えば、栄養の偏りや不規則な食事などによる肥満や、それらが原因と考えられる生活習慣病の増加がみられます。また、若い女性を中心にみられる過度のダイエット志向に加え、高齢者の低栄養傾向等の健康面での問題も指摘されているところです。

また、食の安全や信頼にかかわる問題や、外国からの食料輸入に依存する問題など、食を取り巻く環境が大きく変化しています。こうした中で、食に関する知識を身に付け、健康的な食生活を実践することにより、心と身体の健康を維持し、生き生きと暮らすために、食育を通じて、生涯にわたって「食べる力」=「生きる力」を育むことが重要になっているのです。

食育によって身に付けたい「食べる力」には、食事を通じて「心と身体の健康を維持できること」、「食事の重要性や楽しさを理解すること」、「食べ物を自分で選択し、食事づくりができること」、「家族や仲間と一緒に食べる楽しみを味わうこと」、「食べ物の生産過程を知り、感謝する気持ちを持つこと」などが含まれます。これらは、子供のころから家庭や学校、地域など様々な場所で学び、身に付けていくものです。そして、大人になってからも生涯にわたって実践し、育み続けていくものです。さらに大人には、そうした食の知識・経験や日本の食文化などを「次世代に伝える」という役割もあります。

食育を実践するのは、皆さん一人ひとりです。以下に紹介する日常生活の中での主な取組を参考に、できることから食育を始めましょう。

◇◆「食育の環(わ)」◆◇

「食育の環」とは、生産から食卓までの「食べ物の循環」、子供から高齢者、そして次世代へといった「生涯にわたる食の営みの循環」を示します。また、食育は、豊かな自然、先人から受け継がれてきた文化、社会経済といった環境と密接な関係を持ち、生活の場としての地域とのつながりとも関連しています。

食育の環
 (資料:農林水産省)

2.健全な食生活を実践するには?

「朝ごはん」から始める規則正しい食生活

食生活と健康は深く関係しています。朝ごはんを食べないと、1回の食事の量が増えて食べ過ぎることがあり、肥満や生活習慣病の発症につながることがあります。栄養バランスのとれた、規則正しい食生活をするために、次のようなことから実践してみましょう。

(1)朝ごはんをきちんと食べる

「朝は忙しくて、朝ごはんの支度をしたり食べたりする時間がない」「朝ごはんより寝ていたい」「朝ごはんくらい抜いたって大丈夫」と考える人がいるかもしれません。しかし、朝ごはんは1日のパワーの源であり、朝ごはんを食べると、寝ている間に低下した体温を上昇させ、からだは1日の活動の準備を整えます。また、毎日朝食を食べる子供ほど、学力調査の平均正答率や体力テストの合計点が高い傾向にあるという調査結果も報告されています。1日の食事を規則的にとり、生活リズムを作っていくことが、健康的な生活習慣にもつながります。朝ごはんで、生き生きとした1日のスタートを切りましょう。

下記のページに、朝ごはんをきちんと食べるための工夫が紹介されていますので、ぜひ、参考にしてください。

農林水産省「めざましごはん」

◇◆子供の朝食欠食は、近年、増加傾向にあります。◆◇

小・中学生の朝食欠食率は、一時期は減少傾向がみられたものの、近年は増加傾向がみられます。第3次食育推進基本計画では、朝食を欠食する子供(小学生)の割合を令和2年度(2020年度)までに0%とすることを目標としていますが、平成30年度(2018年度)は、5.5%であり、第3次基本計画作成時の調査結果(4.4%:平成27年度(2015年度))と比べて、1.1ポイント増加しています。
過去の調査によると、朝食を食べない理由としては、小学生、中学生とも、「食べる時間がない」、「食欲がない」の順に多く、それぞれ約4割を占めていました。
文部科学省「全国学力・学習状況調査」において、「朝食を毎日食べていますか」とともに、「毎日、同じくらいの時刻に起きていますか」、「毎日、同じくらいの時刻に寝ていますか」という質問もしていますが、「毎日、同じくらいの時刻に起きていない」、「毎日、同じくらいの時刻に寝ていない」小・中学生の割合が平成29年度(2017年度)から平成30年度(2018年度)までにかけて増加しています。また、これらの小・中学生ほど朝食欠食率が高い傾向がみられます。

注:
1)朝食を「全く食べていない」及び「あまり食べていない」の合計
2)小学6年生、中学3年生が対象
3)平成23年度は、東日本大震災の影響等により、調査を実施していない。
 (資料:文部科学省「全国学力・学習状況調査」)

農林水産省「平成30年度食育白書 第1部特集:健康寿命の延伸につながる食育の推進 p20コラム「子供の朝食欠食の状況について」」

(2)栄養バランスを考える

食事を作ったり、選んだりするときに、主食、主菜、副菜を組み合わせ、栄養バランスのとれた食事を意識しましょう。
栄養バランスのよい食習慣の人は、そうでない人と比較して死亡のリスクが低くなることが報告されています。

●主食
ごはん、パン、めんなどの穀物を主な材料にした料理。炭水化物を多く含み、エネルギーの元になる。

●主菜
 魚、肉、たまご、大豆を主な材料にした料理。たんぱく質や脂質を多く含む。

●副菜
 野菜、いも、海藻などを主な材料にした料理。いろいろなビタミン、鉄、カルシウム、食物繊維などを多く含む。

「主食」、「主菜」、「副菜」を組み合わせた食事の参考になるものとして、1日に何をどれだけ食べればよいかの目安を示した、「食事バランスガイド」があります。これは、「主食」「副菜」「主菜」「牛乳・乳製品」「果物」の5つの料理区分に分け、それぞれの料理区分の1日分の適量と料理例をイラストで分かりやすく示したものです。食事バランスガイドの活用方法は、下記のウェブサイトなどに紹介されています。上手に活用して、栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。
また、「日本型食生活」は、ごはんを中心に、魚、肉、牛乳・乳製品、野菜、海藻、豆類、果物、茶など多様な副食などを組み合わせ、栄養バランスに優れています。ライフスタイルに応じて、日本型食生活を積極的に取り入れましょう。

3.食べることの「楽しみ」って?

だれかと一緒に食事をつくったり食べたりすると、おいしさも楽しさもアップ

何人かで食卓を囲む食事の場は、コミュニケーションの場でもあります。

しかし、最近は、核家族化やライフスタイルの多様化などによって、家族みんなが集まって食事をする機会が減ってきているといわれています。また、若者からお年寄りまで、一人暮らしの人も多くなっています。一人だと食事の支度が面倒で料理をしなくなったり、食欲が出なかったりする人も少なくありません。

一人で食べることが多い人は、家族や仲間と、会話を楽しみながら、ゆっくり食事をする機会を増やしていきましょう。みんなで一緒に食卓を囲んで、共に食べることを「共食(きょうしょく)」と言います。共食には、一緒に食べることだけではなく、「何を作ろうか」と話し合って一緒に料理を作ったり、食事の後に「おいしかったね」と語り合ったりすることも含まれます。

子供がいる家庭では、家族みんなで一緒に食卓を囲むことによって、子供たちが食事の楽しさを実感することができます。また、箸の正しい持ち方や 食事のマナー、「いただきます」「ごちそうさま」といった食事のあいさつ、栄養のバランスを考えて食べる習慣や食べ物を大事にする気持ち、郷土料理や季節の料理といった食の文化などを、親や祖父母から子供に伝える良い機会にもなります。

一人暮らしの人は、友達や仲間を誘って一緒に食事をつくったり、食べたりする機会を増やしてみませんか。一緒にお弁当を食べたり、食堂で食べたり、誰かの家でホームパーティーをしたり。地域の食事会や食のイベントなどが開催されている場合もありますので、積極的に参加して、一緒に食べる楽しさを味わいましょう。

近年、地域住民等による民間発の取組として無料または安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供する子供食堂等が広まっており、家庭における共食が難しい子供たちに対し、共食の機会を提供する取組も増えています。

農林水産省「平成29年度食育白書 第1部特集:多様な暮らしに対応した食育の推進~食卓を囲み食事を共にすることから始める食育の環~」

◇◆食事を共にする頻度が高い人は、食生活が良好な傾向があります。◆◇

近年、食事を共にすることと健康や良好な食生活に関する国内の研究結果を分析した報告(※1) があります。その報告によると、誰かと食事を共にする頻度が高い人は、(1)心の健康状態について、「気が散る・根気がないなどの精神的な自覚症状が少ない」、(2)食生活について、「ファストフードの利用が少ない」、「野菜や果物など健康的な食品の摂取頻度が高い」といった傾向がみられました。

海外の研究結果でも、同様の報告(※2)があり、家族と食事を共にする頻度が高いと、野菜や果物の摂取量が多いなど食物摂取状況が良好であることが示唆されています。

農林水産省の「食育に関する意識調査」においても、孤食がほとんどなく、ほぼ毎日誰かと食事を共にしている人は、孤食が週2日以上の人と比べ、ほぼ毎日主食・主菜・副菜を3つそろえて食べると回答した割合が多く、食事のバランスが良い傾向がみられました。

さらに、朝食摂取頻度や生活習慣病の予防や改善のために気をつけた食生活の実践状況も、食事を共にする頻度が高い人のほうが、良好な傾向がみられました。

(資料:農林水産省「食育に関する意識調査」(平成29年11月実施)をもとに当コンテンツにて作成)

※1:會退友美、衛藤久美.共食行動と健康・栄養状態ならびに食物・栄養素摂取との関連 ―国内文献データベースとハンドサーチを用いた文献レビュー―.日本健康教育学会誌.2015;23(4):279-289.当該文献の中で、統計的に有意な正の関連がみられた研究のみ(心の健康状態:6件/7件、良好な食生活:7件/11件)を抜粋し、図は農林水産省が作成
※2:衛藤久美、會退友美.家族との共食行動と健康・栄養状態ならびに食物・栄養素摂取との関連-海外文献データベースを用いた文献レビュー-.日本健康教育学会誌.2015;23(2):71-86

農林水産省「平成29年度食育白書 コラム:食事を共にする頻度が高い人は、食生活が良好な傾向」(p19-21)[PDF]

4.私たちの食べ物はどこから?

農林漁業の生産現場から残した食べ物の行方まで

毎日口にする食べ物が私たちのところに届くまでには、生産・加工・流通など様々な過程があり、それらはたくさんの人の手によって支えられています。食べ物を取り巻く様々なことがらについて、知識や理解を深めたり、体験したりして、食べ物の大切さを考えてみましょう。

(1)農林漁業、食品工場、市場などの現場に触れる

農林漁業や食品工場、市場などを見学したり体験したりすることは、食生活が多くの人の手に支えられていることを考えるきっかけになる取組として注目されています。
学校の農業体験授業や教育ファーム、体験農園など、全国各地で様々な農林漁業の体験活動が行われています。
工場見学では、原料が加工されて製品になるまでの過程を見ながら、安心しておいしく食べてもらうための工夫を知ることができます。
また、市場などでは様々な食べ物を発見したり、食べ物のおいしい食べ方を教えてもらったりすることもできます。

農林水産省「農林漁業体験の推進」

農林水産省「全国工場見学・市場見学一覧」

(2)食料自給率について考えてみる

国内で消費する食料のうち、どのくらいが国内で生産されているかの割合を「食料自給率」といいますが、平成29年度(2017年度)現在、日本の食料自給率(カロリーベース)は38%で、62%は海外からの輸入によるものです。食料自給率が低いと、私たちの生活にはどのような影響があるのか、また、食料自給率を向上させるために私たちができることは何かを考えてみましょう。

 

(3)食品ロスについて考えてみる

世界中で約8億人が飢餓や栄養不足で苦しんでいる一方で、日本では、年間643万トンと推計(平成28年度)される「食品ロス」が排出されています。 食品ロスは、売れ残りや期限切れの食品、食べ残しなど、食べられるのに捨てられている食料です。食品ロスを減らすために、私たちはどのようなことを心がけたらよいのか、考えてみましょう。

農林水産省「食品ロスの削減・食品廃棄物の発生抑制」

消費者庁「食べもののムダをなくそうプロジェクト」

食育の取組の最初の一歩を踏み出すための手引きとして、「食育ガイド」をご活用ください。皆さんが、ご自分の食生活の振り返りを行い、実践できそうなことをチェックしたり、書き込んだりすることができるようになっています。「食育ガイド」は、下記のホームページに掲載されていますので、ぜひ、皆さんの食育の実践のためにご活用ください。

食育ガイド

◇◆第3次食育推進基本計画により総合的かつ計画的に食育が推進されています。◆◇

食育を進めるため、政府は「食育基本法」に基づき、5年を期間とする「食育推進基本計画」を作成して、様々な施策に取り組んできたところです。これまでの取組の成果と食をめぐる様々な課題を踏まえ、さらに取組を進めていくために、平成28年(2016年)4月からを計画期間とした「第3次食育推進基本計画」を作成し、食育を推進しています。「第3次食育推進基本計画」では、5年間の取組の柱として、次の5つの重点課題を掲げています。

(1)若い世代を中心とした食育の推進
食に対する意識が低い20歳代・30歳代の若い世代。将来親となる若い世代が自分の健康を守るとともに、次世代に食の知識や体験をつなげていけるよう、食育を推進します。

(2)多様な暮らしに対応した食育の推進
単独世帯や一人親世帯の増加など、家庭生活の状況は多様化しています。こうした中で子供や高齢者を含む全ての国民が、健全で充実した食生活を実現できるよう、共食の機会の提供などを通じた食育を推進します。

(3)健康寿命の延伸につながる食育の推進
健康寿命を伸ばすには生活習慣病の発症・重症化を予防することが重要です。そのために健全な食生活を実践できるよう食育を推進します。

(4)食の循環や環境を意識した食育の推進
食に対する感謝の気持ちを深めていくには、生産者をはじめ多くの関係者に食が支えられていることを知ることが大切です。生産から消費までの食べ物の循環を意識し、食品ロスの削減など環境にも配慮できるよう食育を推進します。

(5)食文化の継承に向けた食育の推進
日本の食文化が十分に受け継がれていない現状を踏まえ、郷土料理や伝統食材、食事の作法等、伝統的な食文化に関する国民の関心と理解を深めるなどにより伝統的な食文化の保護・継承を推進します。

農林水産省「食育の推進」(食育施策(1)食育基本法・食育推進基本計画等)

◇◆毎年6月は「食育月間」、毎月19日は「食育の日」です。◆◇

毎年6月は「食育月間」です。国や地方公共団体、関係団体などが協力して、食育推進運動を重点的かつ効果的に実施し、食育の一層の浸透を図ることとしています。
農林水産省「食育月間」

月間中の令和元年(2019年)6月29日(土)と30日(日)には、山梨県甲府市で第14回食育推進全国大会が開催されます。大会では、「食がつなぐ人と未来~健康寿命日本一の富士の国やまなしから全国へ~」をテーマに、食育活動表彰のほか、服部幸應氏やさかなクンの講演、女優の石田ひかりさんやアスリートのトークショー、アンパンマンショー、関連イベントなどの様々な催しが行われます。
また、毎月19日は、自分や家族の食生活を見直す、「食育の日」とされています。「食育月間」や「食育の日」を機会に、皆さんも食育に取り組んでみませんか。


編集(転載作業) チームコンシェルジュ
政府広報オンライン
「食べる力」=「生きる力」を育む 食育 実践の環(わ)を広げようより全文転載