COOP SAPPORO コンシェルジュ

暮らしお役立ち情報 No.1

[サービスコード/P00057-00006]
北海道の住まいづくりガイド④ 住宅の基本制度で守られるものと守られないもの
暮らしお役立ち情報 No.1

住宅の基本制度は最低限のことは守ってくれますが、完璧ではありません。その理由は、住宅に対して求めるものが人それぞれによって異なるからです。
ここでは、その最低限の仕組み(法律)で「守られるものと守られないもの」を要点別に視覚化し、とりうる対応策などについて説明したいと思います。(公開日:2018年8月1日)

以下のページで、最低限の安全・安心を確保する基本制度について概要を説明しました。
施主と各建築関係者の立場と役割、住宅の基本制度

しかし、基本制度は最低限のことは守ってくれますが、完璧ではありません。その理由は、住宅に対して求めるものが人それぞれによって異なるからです。

「基本は守りますが、より安心を追求したい場合は、自分の判断でオプションを追加してください」・・・かんたんにいうと住宅制度はこのような立場で成り立っています。

住宅を支える基本とオプション(イメージ)

ここでは、その最低限の仕組み(法律)で「守られるものと守られないもの」要点別視覚化し、とりうる対応策などについて説明したいと思います。

なんとなく「しっかり守られているだろう・・・」ではいけません。あなたにとって何が必要で何が不要なのかを、以下の3つの要点から考えてみましょう。

要点別 追加対策メニュー

 

  1.住宅の保証制度
  2.耐震性
  3.シックハウス

1.住宅の保証制度で追加可能な対策

 

住宅の建築過程や引渡し後に発生する、倒産欠陥といった万が一の事態に備えるための保証制度が用意されています。この内、基本制度では守られない点について視覚化し、その対応方法について見ていきます。

【 基本制度で守られないこと 】

基本制度(品確法、住宅瑕疵担保履行法)では引渡し後10年間の重大欠陥について補償されますが、これを言いかえると、11年目以降は補償されない、重大欠陥以外は補償されないということになります。

■ 重大欠陥とは
・構造耐力上重要な部分の不具合 ・雨水の浸入を防止する部分の不具合

また、引渡し以降は会社が倒産しても補償されますが、引渡し前に会社が倒産してしまうと、契約の履行をカバーするものがありません。

このように、逆に解釈すると守られていないものが見えてきます。これを知った上で、「基本制度で十分」と判断するか「備えておこう」と判断するかは皆さん次第です。

それでは、この備えとして選択できる対応策について見ていきます。

住宅の保証の安全をさらに高める方法

1.11年目以降の補償

■瑕疵担保責任保険の延長
重大欠陥の10年間の補償とその資金を確保しておく義務を負う工事請負人は、資金を確保する方法の代わりとして、瑕疵担保責任保険に加入する場合が多くあります。

この保険に加入している住宅会社の場合、さらに最長で10年間、保険期間を延長できる場合があります(10年目の点検とメンテナンス工事が必要)。
なお、この保険を扱える国土交通大臣指定の住宅瑕疵担保責任保険法人は複数社あります。(法人は以下のページに掲載されています。)
新築住宅のかし保険-一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会

その内、参考として住宅保証機構の例を掲載します。

■ハウスメーカー独自の長期保証
また、上記の瑕疵担保責任保険に加入せず、補修のための資金を「供託」という方法により確保する住宅会社もあります。大手ハウスメーカーに多いのですが、そうしたケースでは、10年保証は当然のこと、会社独自に20年、30年といった長期保証プランを提供しています。

ハウスメーカーにより中身は異なりますので、内容をしっかり確認しましょう。

2.重大欠陥以外の不具合への対応

基本制度(品確法、住宅瑕疵担保履行法)の10年保証の対象は、構造耐力上重要な部分雨水の浸入を防止する部分の不具合なので、それ以外の例えば、台所や家具、建具、内装、設備機器といったものは対象外ということになります。

こうした部分は、メーカー1年、住宅会社が提供する保証で3~5年といったサポートが一般的ですが、わずかな費用で10年保証にできるなど、会社により差があります。

定期訪問点検なども含めてどういったサポートシステムを提供してくれるのかを確認することが大切です。

3.工事途中の倒産による損害回復

住宅会社が万が一倒産しても10年保証が確実に果たされる基本制度のおかげで消費者にとって一定の安心が約束されるのですが、そのことで「倒産リスク」というもの全般に漠然とした安心を抱いてしまうことのないように注意しましょう。

つまり、引渡し後の「倒産リスク」に不安を感じる必要はありませんが、引渡し前の「倒産リスク」まで無くなっているわけではないということです。

そのため、引渡し前の工事途中に住宅会社が倒産し、支払った前払金の分まで工事が行われないなどの損害に備えるため、住宅完成保証制度が用意されています。

こちらも国土交通大臣指定の住宅瑕疵担保責任保険法人が提供する制度ですが、参考として住宅保証機構の例を掲載します。

ご自身の必要性に応じて、活用を検討してみてください。

2.耐震性で追加可能な対策

 

続いて住宅の耐震性について、基本制度(建築基準法)では守られない点について視覚化し、その対応方法について見てみます。

【 基本制度で守られないこと 】

■大規模地震
・震度6強~7に達する地震-建物が存在している間に1度は遭遇すると考えられる極めて稀に発生する地震

■大地震では人命保護が優先
まず、基本制度(建築基準法)では、大規模地震(震度6強~7に達する大地震)が発生しても建築物が崩壊・倒壊しないことを求めています。

言いかえると、大地震においては、人命に直結する崩壊や倒壊が起こらない構造性能が確保されていれば、ある程度の損傷や部分的な破壊が生じてもやむを得ないということです。

これは、崩壊・倒壊は免れても大規模な改修や建て替えをしなければ建物の継続使用ができない可能性があることを意味します。

つまり、法は「人命」を守ることを要求水準としており「財産」を守ることまでは求めていないのです。

■中規模地震
・震度5強程度の地震-建物が存在している間に数回は遭遇すると考えられる地震

■なぜ、人命保護までなのか
大規模地震において財産保護まで求められないのは、建築基準法が最低限の基準であるためです。仮に法律が震度7でも損傷しないこと(財産保護)を求めれば、構造体にかかる費用は大きくなり、極めて稀な確率に対して投じる額として不合理が生じるケースがでてきます。

それは、「家が30年もってくれればいい」と考える人と「孫の代まで住み継げる家にしたい」と思う方では、住宅の耐震性への期待が大きく異なるからです。よって、最低限は法が守り、どこまでよくするかは施主の考えでプラスするという仕組みになっているのです。

つまり、法律では最大震度7が来ても人命は守りますが、財産まで守るかどうかは施主が自らの判断で決断してくださいということなのです。

ちなみに耐震化とか新耐震基準という言葉をよく耳にしますが、それらは古い基準から現行の建築基準法レベルの耐震性に改修することを求めているものです。つまり、要求水準としては上記と同じ大地震時における人命保護というレベルになります。

それでは、耐震性においてより安心を高めるための対策について見てみましょう。

【 耐震性の安心をより高める方法 】

1.耐震等級の取得
住宅においては、耐震性に余裕を持たせる方法として、耐震等級の取得が最も客観的でわかりやすい方法です。

■耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)のレベル

耐震等級1:建築基準法レベルの耐震性
耐震等級2:建築基準法レベルの1.25倍の耐震性(※)
耐震等級3:建築基準法レベルの1.5倍の耐震性

※等級1で耐えられる地震力の1.25倍の力に対して倒壊や崩壊等しない程度を指します。(耐震等級3についても同様)

住宅性能表示制度の耐震等級2以上の評価を取得することで、建築基準法のレベルよりも高い耐震性を明確にすることができます。

等級2や等級3といった数字と震度7における損傷被害の程度を直結させて説明することはできませんが、この余裕を取ることで、大地震時における損傷被害を少なくすることが期待できます。

なお、長期優良住宅の耐震性の認定要件は等級2となりますが、この要求水準は人命保護に限らず、大地震に遭遇した後も技術的・経済的に補修が可能な程度まで損傷を抑える・・・つまり一定程度の財産保護を想定したものとなっています。
長期優良住宅に係る認定基準 技術解説(一社 住宅性能評価・表示協会)

よって、住宅で耐震性の余裕を高める手段として最も一般的で合理的な方法は、この耐震等級2の取得ということになるでしょう。

注)等級について
住宅性能表示制度を利用せず、例えば耐震等級2相当として、同等のつくりで建てるという方法もありますが、客観性に欠ける点があることに留意しましょう。公的機関に設計と現場検査(4回)のチェックを受ける住宅性能表示制度での評価を得ることによってはじめて客観性が保たれます。

関連:住宅の付加価値や安心を高める公的制度

2.免震工法の採用
免震工法とは弾力のあるゴムやダンパーを基礎の上に設置し、地震力を減衰させて上部構造に伝わる地震力を小さくする工法です。費用は掛かりますが、これによって、大地震に遭遇した後も建物の使用を継続することができるので、財産保護という視点では優れた工法といえます。

■免震工法の基準
建築基準法で規定する免震工法の構造計算基準において、大地震時の上部構造については、損傷が生じない範囲に留まることとしています。(許容応力度以下(弾性範囲))

※平成12年建設省告示第2009号第6 免震建築物の構造方法に関する安全上必要な技術的基準を定める等の件

3.財産保護のニーズに対応した高耐震住宅
震度7で崩壊・倒壊しないとしても、建て替えが必要となって「財産価値がなくなるのでは大きな買い物の意味がない」と考える施主もいます。そして、そうしたニーズに対応するように、耐震性の高い住宅をアピールするハウスメーカーも増えています。

そのようなメーカーの提供する住宅を参考にするのも一つの方法といえます。しかし、「うちは高耐震住宅です!」「うちの住宅は○○地震で1棟も倒壊しませんでした!」など根拠のない説明に納得してはいけません。(地震で倒壊しないのは法が要求していることであり当たり前です。)

耐震等級2を標準仕様として実績を積み重ねている・・・あるいは公的実験施設の実大振動実験で過去に起こった震度7の地震を再現し、実験結果を公表している会社など、説明に客観性があるかどうかを注意して判断しましょう。

3.シックハウスで追加可能な対策

 

続いて住宅のシックハウス対策について、基本制度(建築基準法)では守られない点について視覚化し、その対応方法について見てみます。

【 基本制度で守られないこと 】

■ホルムアルデヒド
・合板、壁紙用接着剤等に用いられる合成樹脂、接着剤など多くの建材に使われる物質です。ホルムアルデヒドを発散する建材はその放散量(放散速度)に応じて使用が禁止、または使用面積が制限されています。

■クロルピリホス
・シロアリ駆除剤として土台などに用いられていた毒性の強い有機リン系の化合物です。現在、居室のある建築物には使用が禁止されています。

建築基準法に基づくシックハウス対策について|(国土交通省)
シックハウス対策|(住まいの情報発信局)

■2物質以外は規制の対象外
建築基準法では、ホルムアルデヒドとクロルピリホスの2物質が規制の対象になっています。現状、ホルムアルデヒドについては、発散等級が最も優れた(放散量の少ない)製品を内装材に使うのが一般的となっており、確認申請や検査の手続き過程で使用材料がチェックされます。

一方、トルエンやキシレンといった規制対象外物質はチェックの対象となっていません。しかし、規制対象外だからといって健康影響がないとはいえず、そうした物質があることを前提とした設計・工事・生活への配慮が大切です。

 

■内装材以外(物品)も規制の対象外
家具、開放型ストーブ、カーテン、じゅうたん、床ワックス、芳香剤、防虫剤、洗剤など、化学物質を発散する物品は数多くありますがこうした物品も規制の対象にはなりません。

■室内濃度の測定義務はない
現状、以下の通り厚生労働省により化学物質の室内濃度の指針値が示されています。この指針値の意味は、厚生労働省で以下のように説明しています。

■室内濃度指針値の意味
現時点で入手可能な毒性に係る科学的知見から、ヒトがその濃度の空気を一生涯にわたって摂取しても、健康への有害な影響は受けないであろうと判断される値を算出したもの。

シックハウス対策  室内濃度指針値一覧表より|(厚生労働省)

なお、建築基準法でこの指針値を守る義務や測定義務などは課されていません。

建築基準法に基づくシックハウス対策について パンフレットより|(国土交通省)

それでは、以上を踏まえ、シックハウス対策においてより安心を高めるための対策について見てみましょう。

【 シックハウス対策の安心をより高める方法 】

1.適切な換気と化学物質の発生源を減らす

シックハウス対策はホルムアルデヒド、クロルピリホスの2物質だけを対策すればよいのではありません。

それ以外の規制対象となっていない化学物質や、内装材以外の家具や身の回り品から発散する化学物質・・・これらを含め総合的に対応するには、換気の励行化学物質の発生源を減らすことがとても大切です。

 

■化学物質を発散しない内装材料の選択

シックハウスのみを考えれば、化学物質を発散しない無垢製材や珪藻土などの自然素材を内装材にできる限り用いるのが有効な方法の一つです。ただし、コスト性や、そり、ムラ、はがれなどのデメリットもありますので、総合的な判断が必要です。

 

■規制対象外の化学物質の対応

トルエンやキシレンといった化学物質は規制対象外なので確認申請などでチェックがされません。

シックハウスが気になる方は、トルエンやキシレンなどの含有量の少ない接着剤を使用するなど、使用材料全般に化学物質の使用を控えるよう設計・工事依頼をする、あるいは、そうした材料知識やシックハウス対策に優れた住宅会社を選定するといったことが大切になります。

 

■家具や身の回り物品に気を付ける

家具などの物品から出る化学物質は、強い刺激を放つものもあります。これは、購入する時点で気を付けることが一つ。そして、購入して間もない期間は換気や通風を十分に行うように心がけることが大切です。

 

■24時間換気の徹底

居室の24時間換気が法律で義務付けられていますが、この換気スイッチを住人が操作できるようになっているのが一般的です。

しかし、この換気は、ホルムアルデヒドだけではなく、規制対象外の化学物質や、家具などから出る化学物質などを排出する目的も兼ねた非常に重要なものです。

節電も大切ですが、この24時間換気スイッチだけは切ってはいけません。


2.濃度測定

住宅性能表示制度を利用すれば、以下の化学物質の室内濃度を測定し表示してもらうことができます。

建築基準法に基づくシックハウス対策について パンフレットより|(国土交通省)


住宅性能表示制度による第三者性、透明性のある測定によって、厚生労働省指針値をクリアすることを工事完了時に確認できれば、引渡しのときも安心できます。
シックハウス対策・換気(空気環境)(一社 住宅性能評価・表示協会)

なお、住宅性能表示のメリットなどについては、以下をご覧ください。
住宅の付加価値や安心をさらに高めるための制度―関連制度全体図

まとめ

 

以上、基本制度で守られるものと守られないものを具体的に見てきましたが、「法律に合っているのだから大丈夫だろう」という漠然とした期待では十分ではないことがお分かりいただけたでしょうか。

最低限の基本制度に過大な期待をせず、以上に掲げた選択肢から自分の判断で選択するという過程を経ていることが、後悔しない家づくりで最も大切なここといえます。

そして、もう一ついえる大切なことは、こうした、オプションの選択肢にどこまで対応できるのかという各社の差が、依頼先を選ぶときの重要な判断材料になるということです。

見た目やブランドだけに目を奪われないよう、住宅会社のこうした点をしっかり見るようにしましょう。