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暮らしお役立ち情報 No.4

[サービスコード/P00122-00002]
1-1.がんの発生要因
暮らしお役立ち情報 No.4

ここでは、科学的に明らかにされているがんの発生要因について説明します。(公開日:2018年9月20日)

1.はじめに

がんは、さまざまな要因によって発症していると考えられており、その中には予防できるものも多く含まれています。
日本人では、男性のがんの53.3%、女性のがんの27.8%は、ここにあげた生活習慣や感染が原因でがんとなったと考えられています。そのうち、大きな原因は、喫煙(男:約29.7%、女:約5.0%)と感染(男:約22.8%、女:約17.5%)で、その他のものは比較的小さいと報告されています。
ここでは、喫煙、飲酒、食物・栄養、身体活動、体格、感染、化学物質、生殖要因とホルモンについて、日本や海外の研究結果から科学的に明らかにされているがんの要因を述べます。
なお、こうした研究のうち、日本人を対象とした研究結果をもとに、日本人のがんの予防が定められています。詳しくは、「1-4.科学的根拠に基づくがん予防」をご覧ください。

2.喫煙

これまでの研究から、たばこが肺がんをはじめとするさまざまながんの原因となることが、科学的に明らかにされています。また、たばこを吸うと、本人だけでなく、吸わない人にも健康被害を引き起こします。
がんを予防するためには、たばこを吸わないことが最も効果的です。現在たばこを吸っている人も、禁煙することによってがんになるリスクを下げることができます。
詳しくはこちらもご覧ください。
1-2.たばことがん

3.飲酒

飲酒は口腔、咽頭、喉頭、食道、大腸、肝臓、乳房のがんのリスクを上げる、と報告されています(※1)。飲酒により体内に取り込まれたエタノールは、動物での発がん性が示されているアセトアルデヒドに代謝されるため、がんの原因になると考えられています。また、飲酒は、免疫機能を抑制するとともに、エストロゲン代謝へ影響を及ぼすこと、食事が偏り栄養不足につながることから、がんの原因となることが報告されています。なお、喫煙者が飲酒をすると、食道がんやがん全体の発症リスクは特に高くなること(交互作用)がわかっています。

4.食物・栄養

食物や栄養について、さまざまな研究が行われていますが、確実にがんのリスクになるとされている食品は少ないです(※1)。確実なものとしては、牛・豚・羊などの赤肉や加工肉は大腸がんのリスクを上げるとされています。また、食物繊維を含む食品が大腸がんのリスクを下げ、中~高強度の身体活動が結腸がんのリスクを下げるとされています(表1)。
野菜・果物にはカロテン、葉酸、ビタミン、イソチオシアネートなどさまざまな物質が含まれており、これらの成分が発がん物質を解毒する酵素の活性を高める、あるいは生体内で発生した活性酸素などを消去すると考えられています。しかし、野菜・果物は、確実にがんのリスクを下げるという報告はされておらず、じゃがいもなどを除いた非でんぷん野菜が、口腔・咽頭・喉頭で、果物が口腔・咽頭・喉頭・肺で、がんのリスクを下げる「可能性が大きい(Probable)」と報告されています。国際がん研究機関のワーキンググループでは、「野菜・果物によるがん予防効果は、必ずしも確立した関連ではない。しかし、がんを含むあらゆる病気の予防の観点から、野菜・果物を多くと摂ることは推奨される。」と報告されています。
塩蔵食品は胃がんのリスクを上げる「可能性が大きい」と報告されています。高濃度の塩分は胃粘膜を保護する粘液を破壊し、胃酸による胃粘膜の炎症や、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌[Helicobacter pylori : H. pylori])の持続感染を引き起こしたりすることにより、胃がんのリスクを高めると考えられています。 また、塩蔵食品は塩分だけでなく、亜硝酸やニトロソ化合物などの発がん物質を含むため、胃がんのリスクを高めると考えられています。

表1 食物関連要因とがんとの関連のまとめ(※1)

5.身体活動

運動は、結腸がんのリスクを確実に下げ、閉経後乳がんと子宮体がんのリスクを下げる可能性があることが報告されています(※1)。この理由としては、肥満の解消、血糖を下げるホルモンであるインスリンの働きの改善(インスリン抵抗性の改善)、免疫機能の増強、脂質の吸収などを調節する胆汁酸の代謝への影響などがあると考えられています。

6.体格

体格の影響で、以下のリスクが「確実」に上がると報告されています(※1)。
肥満・・・食道・膵臓・肝臓・大腸・乳房(閉経後)・子宮体部・腎臓のがん
成人後の体重増加・・・乳房(閉経後)のがん
高身長・・・大腸・乳房・卵巣のがん

肥満が発がんに及ぼすメカニズムは多様であると考えられますが、脂肪組織中からエストロゲン(女性ホルモンの一種です)が産生されることで、子宮体がんや閉経後乳がんのリスクを上げると考えられます。また、肥満に伴ってインスリンが十分に働かなくなり、インスリンが過剰に分泌されてしまう高インスリン血症が起きたり、細胞の増殖・分化を促進するインスリン様増殖因子が持続的に増加したりすることで、結腸がんなどのリスクを上げると考えられます。
一方で、日本人などのアジア人を対象とした研究結果からは、やせすぎによってがんのリスクが上がることが観察されています。これは、栄養不足に伴う免疫機能の低下や、抗酸化物質の不足などによるものと推察されます。

7.感染

感染は、日本人のがんの原因の約20%を占めると推計されます。
感染の内容として、日本人では、B型やC型の肝炎ウイルスによる肝がん、ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がん、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)による胃がんなどがその大半を占めます(表2)。他には、エプスタインバーウイルス(EBV)による悪性リンパ腫や鼻咽頭がん、ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型(HTLV-1)による成人T細胞白血病/リンパ腫などがあります。
感染による発がんのメカニズムは、ヒトパピローマウイルスのように、感染体が作り出すがん原性タンパク質による直接的な作用や、慢性の炎症に伴う細胞の壊死(えし)と再生による間接的な作用などが報告されています。

表2 がんの発生に関係するウイルス・細菌

8.化学物質

ある種の職業や職業的に多く暴露する化学物質は、ヒトの発がんリスクを上げることが知られています。国際がん研究機関により、発がん性がある(group 1)と分類されたものだけでも120種類の化学物質や職業がリストされています。
関連する臓器としては肺が最も多くなっていますが、化学物質が直接接触する皮膚、吸入の経路である鼻腔・喉頭・肺・胸膜、そして排泄される尿路なども多いのが特徴です。

先進国では、職場環境が改善され、発がんの可能性のある化学物質の使用の禁止や、暴露の制限がされています。しかし、発展途上国においては、そのような対応が十分ではないため、今後も問題となる可能性があります。

9.生殖要因とホルモン

エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲンなどの性ステロイドホルモンが、乳房、子宮体部、卵巣、前立腺におけるがんの発症に重要な役割を果たしていると考えられています。また、ホルモン剤や抗ホルモン剤は、一部のがんのリスクを上げる一方、他の部位のがんのリスクを下げることがわかっています。
以下に、がんのリスクを確実に上げるもしくは下げるホルモン剤のうち、主なものを記します(※2)。

■がんのリスクを上げるもの 
 • エストロゲン療法(閉経後:子宮体がん・卵巣がん・乳がん)
 • エストロゲン・プロゲストーゲン合剤の経口避妊薬(肝がん、乳がん、子宮頸がん)
 • エストロゲン・プロゲストーゲン合剤療法(閉経後:乳がん、子宮体がん)
 • 抗エストロゲン薬として乳がんの治療に用いられているタモキシフェン(子宮体がん)


■がんのリスクを下げるもの
 • タモキシフェンの予防的投与(乳がん)

10.「がんの発生要因」参考文献

(※1)世界がん研究基金(World Cancer Research Fund International). Continuous Update Project findings & reports. 2007-2017年

(※2)国際がん研究機関(International Agency for research on Cancer). PHARMASEUTICALS ON THE EVALUATION OF CARCINOGENIC RISKS TO HUMANS. Volume 100A. A REVIEW OF HUMAN CARCINOGENS. 2012年

(※3)国立がん研究センター社会と健康研究センター「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」

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編集・脚本 チームコンシェルジュ

<掲載内容の情報源・根拠>
・国立がん研究センター
 がん情報サービス