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暮らしお役立ち情報 No.17

[サービスコード/P00140-00007]
6.放射線治療のことを知る
暮らしお役立ち情報 No.17

がんに放射線を当てて、がん細胞を破壊してがんを消滅させたり小さくする治療です。骨転移による痛みや脳転移による神経症状を和らげるときにも行います。(公開日:2018年12月7日)

放射線によってがんを治療する

放射線は、細胞が分裂してふえるときに必要な遺伝子に作用して、細胞がふえないようにしたり、細胞が新しい細胞に置き換わるときに脱落する仕組みを促すことで、がん細胞を消滅させたり、少なくしたりします。放射線治療はこのような作用を利用してがんを治療します。放射線治療に用いられる放射線の種類には、X線、γ(ガンマ)線、電子線などがあります。このほか、研究段階ですが陽子線や重粒子線による治療が一部の施設で行われています。

放射線治療の利点は、手術によって切除することなく、がんに対して治療効果を期待できることで、臓器をそのまま残したり、臓器の働きをがんになる前と同じようにしておけることです。がんの種類によって放射線治療の効果(効きやすさ、治りやすさ)は大きく異なり、治療の場所などによって副作用の起こり方もさまざまです。病期などでわかるがんの状態、体調やこれまでの治療の内容などをもとに、放射線治療を行うかどうか、また、どのように行うかについて検討されます。

放射線治療は、がんを治すことを目的として単独で行われることもありますが、薬物療法(抗がん剤治療)や手術などのほかの治療と併用して行われることもあります。手術との併用では再発を防ぐために手術の前後に行われたり、膵臓がんなどでは手術中にがんに放射線を当てることもあります(術中照射)。このほか、骨に転移したがんによる痛みを和らげたり、神経を圧迫してしびれや痛みの原因になっているがんを治療するときにも行われます。治療の進め方について、放射線診断医・治療医、外科医、薬物療法を担当する腫瘍内科医など、それぞれの専門家が集まって検討されます。

放射線治療の方法

放射線治療は、体の外から放射線を当てる「外部照射」と、体の内側から、がんやその周辺に放射線を当てる「内部照射」に分けられます。外部照射と内部照射を組み合わせて行うこともあります。

内部照射の例としては、密封された放射性同位元素を体の中に入れる密封小線源治療と、使用する放射性物質が特定の臓器に選択的に取り込まれる働きを利用してカプセルなどにして内服する方法(非密封の放射性同位元素による治療)があります。

放射線治療において、治療の目的や実際に行われる方法、予想される副作用などはさまざまです。治療を開始する前に治療の目的や方法、副作用への対処法などを放射線治療医や看護師によく聞いておきましょう。

■放射線治療にかかわる人たち

放射線治療は、さまざまな専門の医療職種からなるスタッフがチームとなって行います。放射線治療医(チームの責任者)、医学物理士(放射線量の計算や測定を行い、最適な照射方法を放射線治療医とともに決める)、診療放射線技師(放射線治療医の指示のもとで、実際に照射を行う)、看護師(治療の間、患者さんと家族のケアを行う)などが協力して診療を行っていきます。

放射線治療の準備と実際の流れ

■放射線治療医による診察と説明

放射線治療を受けることになると、担当医から紹介された放射線治療医の診察を受けます。放射線治療医は、がんの広がりや体の状態、これまでの検査や治療の内容をもとに、放射線治療を行うかどうか、どのように行うか、治療を行う場合の目的や副作用、ほかに行う治療などについて検討します。治療の前に、治療の方法、期待される効果、予想される治療期間、副作用などについてよく聞いておきましょう。

■治療計画

CT、X線シミュレーターおよびコンピューター(治療計画装置)を使い、がんや周囲の正常組織の位置を正確に把握し、どの部位に、どの方向から、どのくらいの量を何回に分けて照射するかを検討し、治療計画を立てます。正確に放射線を当てるため、治療中に体が動かないようにする固定具を作製することがあります。皮膚の表面や固定具に印を付ける(マーキング)作業も行います。皮膚の印は治療が終わるまで消さないでください。

■放射線の照射

外部照射の場合

毎回の治療は、マーキングをもとにして照射部位を正確に把握し、診療放射線技師が行います。一般的な治療に要する時間は、治療室に入ってから出てくるまで10~20分程度で、実際に放射線が照射されている時間は数分です。

全体の予定は治療計画により異なりますが、多くの場合、1週間に5日の治療を数週間にわたって行います。

小線源治療の場合

治療は、放射線源の強さによって、24時間から7、8日にわたって治療する場合と、数分の治療を数回繰り返す場合があります。また、針などを使って小さな線源を永久的に刺入する場合もあり、治療の進め方はがんの性質や場所によって異なります。

小線源治療の種類によっては、ほかの人に放射線が当たらないように特別な部屋に入って行ったり、遠隔操作で治療に必要な装置を挿入して行ったりすることもあります。子どもや妊婦との接触を制限される場合があります。放射線治療医や看護師からの注意事項を、よく確認しておきましょう。

治療の間に定期的に放射線治療医の診察があります。治療効果や、副作用がどの程度であるかを把握することが目的で、治療開始時に決めた予定どおりに治療を継続するかどうかを判断します。必要に応じてX線検査、血液検査を行ったり、副作用に対する治療を行ったりします。

■経過観察

治療が終わった後も、治療の効果と副作用などを調べるために放射線治療医の診察を受け、必要に応じて検査を行います。放射線治療の副作用は数ヵ月以上たってから現れることもあるので、定期的に受診することが必要です。

治療中の生活で心がけておきたいこと

放射線治療は通院で行われることが多く、仕事や家事などができる場合もありますが、治療中は体調に気を配り、無理をしないようにしましょう。外部照射の場合、放射線が体内に残ることはないので、周囲への影響はありません。

■食事は十分にとる

回復を早めるためにも、消化がよく、栄養価の高いものをとります。

■休養をとる

疲れやすい、だるいなどと感じたら、無理をしないで休みましょう。

■放射線をあてた場所の皮膚に注意する

放射線をあてた部位の皮膚は日焼けしたようになり、刺激に弱くなります。直射日光を避け、化粧品や香水などは、放射線をあてる部位の皮膚には付けないようにしましょう。

放射線治療の主な副作用と対策

副作用は、主に放射線を当てた場所に起こります。治療中や治療直後(急性期)に現れるものと、半年から数年たってから(晩期)現れるものがあります。症状の起こり方や時期には個人差があります。

■疲労感、だるさ

疲れやすい、だるい、気力が出ない、などの症状が現れることがあります。

対策:治療中は過度な運動を避け、疲れやだるさを感じたら、無理をしないで休みましょう。治療中に感じた疲れは、治療が終了して数週間のうちには感じなくなります。

■食欲がない

治療中に食欲がなくなることがあります。腸に放射線が当たることによる直接的な影響だけでなく、がんの治療に対するストレスも関係すると考えられています。

対策:放射線により障害を受けた正常細胞の修復などのために、普段以上にカロリー、栄養素をとることが望まれます。少量ずつでも数回に分けて食べたり、高カロリーの食事をとるなどの工夫をします。食事がとれないときは無理をしないで、担当医や看護師、栄養士に相談しましょう。

■皮膚の赤み、かゆみ

放射線を当てた部位の皮膚が日焼けしたように赤くなったり、乾燥したり、かゆみや痛みを感じたりします。

対策:こすったり、かいたりしないようにしましょう。衣類は皮膚を刺激しないものにし、入浴やシャワーは短時間で、ぬるめのお湯にし、刺激の少ない石けんを使って泡で流すようにして、ゴシゴシ洗わないようにします。冷たい風や直射日光を避け、痛みや熱感が強い時期には冷やすと軽くなることがありますが、冷やしすぎないようにします。なお、かゆみ止めの軟こうなどの塗り薬を付けるかどうかは、医師の指示に従うことが必要です。

■吐き気

腹部への照射のために胃や腸管の粘膜が荒れることで吐き気を感じる場合と、頭部への照射による影響で吐き気を感じることがあります。

対策:食事は無理なく食べられるものを少しずつとるようにします。担当医から吐き気を抑える薬を処方されることがあります。

■下痢

腸への照射によって腸が荒れると、下痢や軟便になることがあります。

対策:消化のよい食事と十分な水分補給を心がけましょう。担当医から、整腸剤や下痢止めの薬を処方されることがあります。

■口の中の渇き(口腔乾燥)、口内炎

頭頸部(とうけいぶ)のがんなどで口の中やのどに放射線が当たることで、口の中が渇く、のみ込みにくいなどの症状が現れたり、口内炎(口腔粘膜炎ともいいます)になったりします。

対策:起床時と就寝前、毎食後にやわらかい歯ブラシで歯を磨き、口の中を清潔にしましょう。こまめにうがいをすると、乾燥を防ぐとともに、感染の予防にもなります。食事は、粘膜を刺激しないように、かたいものや熱いものは避けましょう。痛みがあれば我慢しないで担当医に相談しましょう。炎症を抑えるうがい薬、塗り薬や痛み止めなどを処方されることがあります。

■脱毛

頭部に放射線を当てると、頭皮が荒れたり、毛の根元にある細胞が影響を受けることによって脱毛が起こることがあります。治療が終われば、多くの場合再び生えてきます。

対策:脱毛の起こる時期や、再び生えてくると予想される時期を聞いておくと、心の準備ができます。脱毛が始まったら、医療用のかつら(ウィッグ)や帽子などを上手に取り入れるのもよいでしょう。直射日光や乾燥に気を付けるなど、頭皮を保護することも大切です。髪を洗うときは地肌を強くこすらないように注意して洗い、すすぎはぬるま湯で流す程度にします。

◇◆放射線治療を受ける前に、聞いておくこと◆◇

以下の項目を参考にしてみましょう。

・放射線治療を行う目的は何ですか。

・どのような効果がありますか。

・ほかの治療法はありますか。

・どのような種類の放射線を、どのような方法で照射しますか。

・治療の期間はどのくらいですか。

・どのような副作用がありますか。

・副作用の対処法はどのようなものですか。

・入院は必要ですか。通院で治療できますか。

・治療の効果はいつ、どのようにして調べますか。

・日常生活で、どのようなことに気を付ければよいですか。

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編集・脚本 チームコンシェルジュ

<掲載内容の情報源・根拠>
・国立がん研究センター がん対策情報サービス
 「がんになったら手にとるガイド」