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暮らしお役立ち情報 No.17

[サービスコード/P00140-00008]
7.臨床試験のことを知る
暮らしお役立ち情報 No.17

病気に対する新しい薬や治療、診断方法は、その安全性や有効性が臨床試験によって確認されてはじめて標準治療として確立します。(公開日:2018年12月7日)

臨床試験は新しい治療法や診断法を評価するための方法です

新しい治療法や薬の候補が標準治療として認められ、一般に普及していくには長い道のりが必要です。本当に効くのかどうか、安全に使えるのかどうかを科学的な方法で調べて確認するための方法が「臨床試験」です。既存のものより有効であると期待される新しい治療法、診断法は、多くの患者さんの理解と協力を得て、「安全に実施できるのか」「期待どおりの効果を発揮するのか」を調べなければなりません。このような情報を集める継続的な取り組みによって、患者さん自身に、あるいは将来の患者さんに、よりよい治療を提供できるようになります。

標準治療(ひょうじゅんちりょう)
標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療をいいます。 一方、推奨される治療という意味ではなく、一般的に広く行われている治療という意味で「標準治療」という言葉が使われることもあるので、どちらの意味で使われているか注意する必要があります。なお、医療において、「最先端の治療」が最も優れているとは限りません。最先端の治療は、開発中の試験的な治療として、その効果や副作用などを調べる臨床試験で評価され、それまでの標準治療より優れていることが証明され推奨されれば、その治療が新たな「標準治療」となります。

臨床試験の目的を知る

臨床試験には、大きく分けて「治験」と「研究者(医師)主導臨床試験」があります。「治験」とは、厚生労働省に新薬としての承認を得ることを目的として行う臨床試験で、製薬企業や医師が行います。治験の結果、厚生労働省から承認が得られれば、認められた病気に対して新薬を用いた治療ができるようになります。

研究者(医師)主導臨床試験とは、研究者(医師)が主体となって非営利で行うもので、すでに承認された薬を組み合わせたり、手術や放射線治療を組み合わせるなどして、最良の治療法や診断法の確立などを目的としています。

■臨床試験の主な3つの段階(がんの場合)

臨床試験には大きく分けて3つの段階があり、各段階で安全性や有効性を確認しながら順番に進められていきます(病気の種類によって進め方が若干異なることがあります)。

・第1相(安全性の確認)

目的:薬の安全性の確認、有効で安全な投与量や投与方法を調べます。
対象:少数の患者さんに参加していただきます。

・第2相(有効性の確認)

目的: 前の段階で有効で安全と判断した投与量や投与方法を用い、薬の有効性と安全性を確認します。
対象: がんの種類や病態を特定し、前の段階よりも多い数の患者さんに参加していただきます。

・第3相(従来の標準治療との直接比較による有効性・安全性の総合評価)

目的:新しい薬や治療法が従来の薬や治療法(標準治療)と比べて、有効性・安全性の面で優れているかどうかを比較試験で確認します。
対象:さらに多くの患者さんに参加していただきます。

臨床試験に参加することの利点と不利な点を知っておく

臨床試験に参加する患者さんにとって、参加することにより、整った環境のもとで新しい治療法を受けられる可能性がある一方で、それほど効き目が高くないことや、副作用が強いことがわかる可能性もあります。その時点ではまだ、新しい治療法の有効性や安全性の評価が定まっていないためです。そのために、新しい治療法を確立していく過程で多くの患者さんの協力を得て、臨床試験を実施する必要があるのです。臨床試験への参加を希望する患者さんは専門家から十分な説明を受け、十分に納得した上で同意し、参加してください。

臨床試験(治験)の詳しい情報を入手するには

臨床試験や治験、医薬品について、関連情報や詳しい情報は、情報の内容が更新される頻度が高いため、主にウェブサイトに掲載されています。「がん情報サービス」の「臨床試験について」をご参照ください。国内で行われている臨床試験(治験)の情報を参照できます。「がんの臨床試験を探す」では、がんの種類、都道府県、実施状況で絞り込んで、臨床試験(治療)を実施している医療機関を探すことができます。なお、掲載された情報の多くは医学・医療関係者等、専門家向けとなっていますので、これらの情報をもとに、患者さん個人で判断することのないようご注意ください。

臨床試験(治験)に参加するには

臨床試験への参加を希望する場合、まずは担当医に相談してみましょう。担当医から臨床試験に参加することについて提案があったときも含めて、あなた自身が、自分の状態と、臨床試験の目的や対象、方法について、十分把握しておく必要があります。その上で、担当医から臨床試験を実施する病院に紹介してもらうことになります。

臨床試験(治験)の実際の流れ

臨床試験は、患者さんの同意と参加のもとに成立します。また、臨床試験を安全、かつ倫理的、科学的に行うために、患者さんと直接接する医師や臨床試験専門のスタッフ(臨床研究コーディネーターもしくは治験コーディネーター:CRC)をはじめとする医療従事者のほかにも、見えないところで多くの専門家がかかわっています。

臨床研究コーディネーター(CRC)
臨床研究が円滑に行われるように、研究全体を調整する役割を担う職種のことです。研究に関する事務的な業務や、被験者と医師・製薬会社間の調整、被験者の心と体のケアなどを行います。医療従事者としての臨床経験が必要とされるため、看護師や薬剤師などを経験してきた人がその役割を果たすことが多いようです。

■臨床試験(治験)の説明

患者さん自身の病状の説明に加え、その病状に対する現在の標準治療、臨床試験で行われる治療の内容、臨床試験の意義、予想される副作用などについて説明が行われます。

■理解と納得と同意

臨床試験への参加は、十分な説明のもとに患者さんの自由意志に基づいて決定します。家族と相談するなどして、よく考えて決定することが一番重要です。不明な点は医師や看護師に、治験の場合には臨床研究コーディネーター(CRC)に遠慮しないで何度でもお尋ねください。同意の後でも、治療の間でも、参加を取りやめることができます。

◇◆臨床試験に参加するときに、気を付けていただきたいこと◆◇

・治療や検査は、スケジュールどおりに受けてください。

・試験(治験)薬は、自己判断しないで、指定されたとおりの量と回数、のみ方や期間を守ってのんでください。

・現在のんでいる薬がある場合には、あらかじめ医師や看護師にお伝えください。

・別の医療機関を受診する場合には、前もって医師にご相談ください。ほかの医師にも、臨床試験に参加中であることをはじめにお伝えください。

・臨床試験に参加してから体調に変化があったり、これまでと違う症状が見られた場合は、医師や看護師にお知らせください。

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編集・脚本 チームコンシェルジュ

<掲載内容の情報源・根拠>
・国立がん研究センター がん対策情報サービス
 「がんになったら手にとるガイド」