COOP SAPPORO コンシェルジュ

暮らしお役立ち情報 No.30

[サービスコード/P00169-00001]
考えておきたい、お墓の将来。「墓じまい」という選択肢。
暮らしお役立ち情報 No.30

「終活」という言葉が一般的に使われるようになって、ずいぶん経ちました。しかし、いつかはやらなくてはいけないと思う方がたくさんいらっしゃる反面、実際に着手されている方はごく少数ではないでしょうか。
ここでは、「墓じまい」について、知っておいた方がいいことなどをまとめました。

難しくなってきたお墓の継承

現代では、少子高齢化社会を迎え、お墓について、従来のように長男が子々孫々と継承していくことが難しくなってきました。

理由としては、継承する子供がいない場合、子供がいても遠方でお墓の管理ができない場合、子供が女子だけで全て他家へ嫁いでしまった場合、経済的な理由でお墓の存続にお金をかけられない場合だけでなく、価値観の変化で若い人たちの間で家を継ぐという考え自体が薄らいできていることや、家族の多様性で父親や母親との血縁関係が複雑であったり、国際結婚などで信教が変わってしまうなど様々です。

また、自分には子供がいるから大丈夫と安心はしていられません。孫・ひ孫の代ではどのような家族構成になっているか、その時になってみないとわかりません。それに、お墓とは費用も手間もかかるもの。子供に迷惑をかけたくないという思いから墓じまいを考える人もいます。

後の世代に思考を委ねるのではなく、一度、自分の代でお墓についての未来を考えてみることが大切です。お墓の在り方を考えることは、自分がどのように弔ってほしいのかを具体的に考えることにもつながるからです。

墓じまいって何?

墓じまいとは、墓地、埋葬等に関する法律でいうところの「改葬」にあたります。「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいいます。墓じまいとは言っても、遺骨がある限りは次の安置先を決めなくてはいけないため、お墓を更地にしてハイ終了というわけにはいかないのです。墓じまいとは、お墓を片付けるのではなく、お墓の引っ越しと考えましょう。

しかし、先祖代々が眠るお墓を、自分の代でどうにかしようだなんて考えるだけでもいけないことだと思う方もいらっしゃるかもしれません。連綿と続く家の歴史を断ち切ってしまうような気持ちになることもあるかもしれません。
実は、日本において一般庶民がお墓を建てることができるようになったのは、江戸後期から明治初期と言われています。それ以前は村はずれなどに土葬されており、現在の火葬を含む一連の葬送儀式はここ100年ほどの比較的新しいものです。時代とともに葬送儀式も変わります。現代増えている「墓じまい」も、時代とともに変わりゆく自然な流れかもしれません。

無縁墓の問題も深刻です。無縁墓とはお墓を管理する親族や縁故者がいなくなった墓のことです。管理する人がいないため、周辺には雑草が生い茂り、墓石もホコリがかぶっているだけでなく、傾いたりヒビが入ったり、中には倒壊しているものもあります。このような無縁墓は全国的にも増えていて、2013年熊本県人吉市の調査では、市内の墓地の4割が無縁墓だったという結果が出ています。決して他人事ではないというのが現実です。
無縁墓はその後、管理者からの申し出がなければ、墓地の運営母体によって、区画が整理され、遺骨は無縁仏を集めた供養塔などに合祀されてしまいます。

墓じまいの後はどうするの?

では、「墓じまい」を考えるとして、どのような選択肢があるのでしょうか。例えばお墓が遠方にある場合は、参拝しやすい場所にお墓を建てることもひとつです。近年では、納骨堂も多様化され、従来のようにお墓に納骨するまでの一時的な保管場所というだけではなく、永代使用可能な納骨堂をお墓の代わりに使う人が増えています。中には、屋内に墓石が並ぶタイプの納骨堂もあり、墓地のイメージはそのままに、屋外のお墓のと違って掃除や草むしりなどの作業から解放され、天候を気にせず参拝できるのが特徴です。

合同墓、合祀墓、という選択肢もあるでしょう。継承者がいない場合、新たなお墓や納骨堂は考えにくいものです。自治体によって利用資格など制限される場合もありますが、費用が安く済む公営と、それよりは高額になりますが、一定期間遺骨を個別に管理してくれたり、定期的に合同供養祭などが開かれるなど運営団体によってサービスに違いがある民営があります。

近年、樹木葬も広く認知されるようになってきました。樹木葬とは、樹木を墓標代わりにする、新しい埋葬形態です。骨壺のまま埋葬する方法と、地面に直接遺骨を埋葬する方法と、大きく2パターンに分けられます。前者では、7年、13年、33年などの期限を設けて、期限後は骨壺から遺骨を取り出し直接埋葬することもできます。

埋葬ではなく、散骨という方法もあります。遺骨を細かくパウダー状にして海に撒く海洋散骨も広がりつつあります。

こちらもご覧ください → 『海洋散骨とは -大自然に還る、葬送-』

ここで注意しなければいけないのは、合同墓、樹木葬、海洋散骨については、一度骨壺から遺骨を埋葬(散骨)してしまうと、もう元には戻せないということです。墓じまいを考える際には、家族や親族とよく話し合い、焦らずに結論を出しことがとても大切です。


編集・脚本 チームコンシェルジュ

<参考文献>

吉川美津子『ゼロからわかる墓じまい』2015年 双葉社

北海道新聞社編『知っ得!納得!みんなの終活』2018年 北海道新聞社