COOP SAPPORO コンシェルジュ

暮らしお役立ち情報 No.34

[サービスコード/P00174-00001]
コロナに負けない体を作るために、免疫のキホンを知っておきましょう。
暮らしお役立ち情報 No.34

世界中に広がりつつある新型コロナウィルス。治療薬やワクチンについてはまだ開発中です。特効薬のない病気から体を守るには、免疫力を上げるしかありません。わたしたちの体に生まれながらにして備わっている、免疫システム。実はこの免疫システムが様々な病気を治してくれていることを知っていますか。多くの場合、薬で病気は治りません。風邪からがんまで、さまざまな病気と闘ってくれる免疫のことについて、知っておきたいことをまとめました。

免疫とは

わたしたちの体には、細菌やウィルスなどの外敵が侵入してくると、それらを排除して病気から体を守ろうとするシステムが生まれつき備わっています。これが免疫というものです。免疫という言葉には「疫病を免れる」という意味があります。

免疫にとっての敵とは

免疫システムは、体にとっての自己と非自己を識別して、非自己を攻撃するというものです。細菌やウィルスは非自己なので攻撃対象になります。また、がん細胞などは自己が作り出したものですが、体にとって正常でないものは非自己とみなし、攻撃の対象になります。

自然免疫と獲得免疫

体に病原体などが侵入してくると、ただちに白血球が反応して攻撃を始めます。これを自然免疫といいます。多種多様な病原体に対応し、侵入者を攻撃して死滅させます。
しかし、自然免疫の力では死滅まで至らない場合もあります。その場合、白血球の中のリンパ球が、侵入者を特定して攻撃をしたり、弱点となる特定の抗体(病原体にくっついて弱らせる役割)を作り出したりします。これを獲得免疫といい、次に同じ病原体が侵入してきた場合、直ちに免疫機能を発動できるように、病原体のことを記憶します。同じ病気に二度はかからない、かかったとしても軽症で済むようになるのは、この獲得免疫が素早く働くからなのです。
自然免疫と獲得免疫はそれぞれ独立して働くのではなく、互いに協力し合って体を守っています。自然免疫が戦いで得た敵の情報を、獲得免疫を担うリンパ球に伝えると、それらが司令塔となって自然免疫で働く部隊を侵入場所へ呼び集めたりします。

免疫システムはバランスが大切

このように免疫システムが正常に働いている間は、わたしたちは健康を維持することができます。
しかし、加齢やストレス、食生活や生活習慣の影響で、免疫システムが正常に働かなくなることがあります。
免疫力自体が低下し、感染症を引き起こす原因となる細菌やウィルスなどの微生物の排除が出来なくなると、生命に危険が及びます。また、わたしたちの体では、日々数千億個の細胞が死に、新たに細胞を生み出しています。その時に発生してしまう細胞の不良品は5000~1万個と言われており、免疫システムが不良品の排除を担っています。免疫力が低下し、うまく排除できないまま不良品が溜まっていくことが、がんの素となるのです。
免疫が過剰に反応してしまっても、体にとっては不都合です。花粉症や気管支喘息、アトピー性皮膚炎などに代表されるアレルギー反応は、免疫反応が過剰に起こることで体に害を与えてしまうのです。
さらに、免疫システムが異常をきたし、自己の正常な細胞を敵とみなして攻撃してしまう場合もあります。関節リウマチや橋本病などの自己免疫疾患がそれにあたります。
免疫システムの働きが低下するのはもちろん、過剰に反応しすぎても、わたしたちの体にとっては害となってしまいます。健康を維持していく上で、免疫システムが正常に働くことはとても重要なのです。

風邪と風邪薬と免疫

多くの人は、風邪をひいたとき、薬局で風邪薬を買ったり、病院へ行って薬を処方してもらったりするので、薬が風邪を治してくれると考えてしまうのではないでしょうか。
実は風邪を治すのは薬ではなく、わたしたちの体の免疫システムです。
風邪をひくと、熱が出ます。この発熱は風邪ウィルスのせいではなく、ウィルスと戦うために集まってきた免疫細胞が、脳に発熱をうながす指令を出すことによって起こります。風邪ウィルスが増殖しやすい温度は33~35℃であり、37℃以上では増殖できなくなるのです。
また、風邪をひくとくしゃみやせきが出ます。これも免疫システムが体内からウィルスを排出させようと気管支に働きかけることによって起こります。そして戦った白血球やリンパ球の残骸や、死滅したウィルスなどが鼻水として出されます。
最終的には免疫システムがウィルスに勝って、体内からウィルスを排除することで風邪は治ります。
では風邪薬は何のために飲むのでしょうか。
風邪ウィルスと戦うときに免疫システムが引き起こす発熱やせき、鼻水などの症状が、わたしたちが暮らしていく上でつらいから、その症状を和らげるために薬があるのです。薬はウィルスを攻撃してくれません。その上、安易に薬に頼ってしまうと、ウィルスを排除するために起きている発熱やせきなどの症状が抑えられてしまい、結果的に風邪が長引いてしまうこともあるのです。

インフルエンザもやっつけるのは免疫力

インフルエンザについても、風邪と同様に、治してくれるのは体の免疫システムです。
インフルエンザと診断されると、病院でタミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬を処方されることがあります。これらも、直接インフルエンザウィルスとは戦いません。インフルエンザウィルスが増えるために必要な酵素を阻害して、結果的にインフルエンザウィルスが増えるのを邪魔するための薬です。免疫システムにとっての後方支援的な役割をしてくれますが、あくまでも戦うのは免疫システムです。

がんと免疫

先にも述べたように、がん細胞となりうる不良品の細胞は、免疫システムによって日々排除されています。しかし、喫煙や生活習慣、ストレスや加齢などによって免疫力が低下してしまうと、不良品の排除が行き届かなくなり、正常でない細胞が増えていくことでがんの発生を促してしまいます。がんが生活習慣病と言われるのはこのためです。
そしてがん細胞は、自分の目印となる抗原を消したり、免疫のはたらきを邪魔する物質を出したりすることで、巧妙に免疫システムから逃れて増殖していくのです。
がんは、本来は免疫の力で治せる病気です。実際に、この免疫の力を利用した治療法が研究開発されています。
例えば、新型がん治療薬のオプジーボは、がんが免疫システムにかけたブレーキを外すことで、正常に免疫システムを働かせてがん細胞をやっつけようとするものです。それから、現在開発が進んでいる光免疫療法は、がん細胞に光を当てて破裂させ、がん細胞の中身を噴出させることで免疫システムを目覚めさせるというものです。
どちらもわたしたちが本来持っている免疫の力でがん細胞をやっつけるという治療法です。まだまだ効果は限定的なようですが、今後の研究に期待したい治療法です。

免疫の力を見直そう

免疫システムのおかげで、わたしたちは健康を維持することができ、病気になっても回復することができるのです。どこか体の調子が悪くなった時、医療機関を受診することはもちろん大切ですが、免疫力が落ちているのかなと考えてみるのも大事なことです。
免疫力を高めるためには、
・正しい食事
・適度な運動
・十分な睡眠
の3つが基本です。どれも当たり前のことですが、忙しい現代人にとって、この3つをしっかり満たして生活することは、簡単ではありません。
それでも、例えば「最近、野菜を食べてないから、今日はサラダを追加してみよう」とか、「今日はエスカレーターをやめて階段にしてみよう」とか、「テレビを見たかったけど、今日はもう遅いから寝て、明日見よう」とか、少しずつでも免疫力を意識した生活を送るように心がけることは、そんなに難しいことではないでしょう。
そして、免疫システムを正常に保つには、自律神経を整えることも大切です。ストレスをためずに、笑顔の多い生活を目指しましょう。健康で楽しい人生を過ごすために、少しずつ意識を変えていけたらいいですね。


編集・脚本 チームコンシェルジュ

〈参考文献〉

鈴木 隆二『カラー図解 免疫学の基本がわかる事典』2015年 西東社
松本 健治(監修)『運動・からだ図解 免疫学の基本』2018年 マイナビ出版